2006 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫採餌行動に多様性を付与する化学情報受容・認知機構に関する研究
Project/Area Number |
18780036
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大村 尚 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助手 (60335635)
|
Keywords | 味覚応答 / アカタテハ / ツマグロヒョウモン / 口吻歯状感覚子 / 脚〓節毛状感覚子 / 糖受容 / 発酵産物 / 阻害作用 |
Research Abstract |
花蜜や腐敗食物を利用するアカタテハ(VA)と花蜜のみを利用するツマグロヒョウモン(AH)を材料にして、口吻や脚に位置する味覚感覚子の形態や機能を調べ、異なる食物を利用するための味覚的な適応形質について考察した。 【形態学的観察】口吻先端に位置する歯状感覚子の形態・数は両種で異なっていた。VAの歯状感覚子はsensory coneが棘状の突起構造に囲まれているのに対し、AHに棘状構造はなかった。感覚子の平均本数はVAで121本、AHで67本であった。VAの中脚、後脚には2種類の毛状感覚子〜長さ50μm太さ5μm程度の感覚子Aと長さ100μm太さ10μm程度の感覚子B〜が認められたが、AHには感覚子Aに相当する1種類の毛状感覚子しかなかった。感覚子Aは各〓節で10本程度、先端の感覚孔は明瞭であった。感覚子Bは〓節腹面に20〜30本あり、感覚孔は不明瞭であった。 【行動生理学的試験】口吻(歯状感覚子)を刺激したときに生じる摂食行動から、個体の味覚応答を調べた。両種はショ糖に対して最も強い摂食行動を示し、以下果糖、ブドウ糖の順であった。AHはVAより高い糖応答を示した。発酵産物(酢酸、エタノール)は単独で摂食行動を誘起せず、ショ糖に添加すると糖応答(摂食行動)を阻害する効果を示した。しかし、AHの摂食行動が腐敗食物中の濃度で強く阻害されたのに対して、VAは発酵産物に対する感受性が低く、0.1〜1%の発酵産物を添加するとVAの摂食行動は僅かに増強される傾向を示した。 【電気生理学的試験】口吻歯状感覚子および脚〓節毛状感覚子の糖応答を調べた。両種の歯状感覚子はショ糖に対して最も強く応答し、以下、果糖、ブドウ糖の順であった。ショ糖に対する応答は両種でほぼ等しかったが、果糖、ブドウ糖に対する応答はAHよりもVAにおいて若干高かった。毛状感覚子はショ糖>果糖>ブドウ糖の順で高い応答を示した。毛状感覚子の糖応答はVAよりもAHにおいて高い傾向が見られた。
|
Research Products
(2 results)