2006 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロサテライトマーカーを用いたヒメハナカメムシ個体群間の遺伝子交流の解明
Project/Area Number |
18780040
|
Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
日本 典秀 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域昆虫-昆虫・植物間相互作用研究ユニット, 主任研究員 (80370675)
|
Keywords | マイクロサテライト / ヒメハナカメムシ / 天敵昆虫 / 生物農薬 / DNAマーカー / 遺伝的多様性 / 個体群構造 / 移動分散 |
Research Abstract |
生物農薬として販売されているタイリクヒメハナカメムシは微小重要農業害虫アザミウマ類の捕食性天敵として知られ、各地の施設栽培野菜で使用されているが、本種はわが国に土着であり、施設外に分散して定着したり、野外個体群との交配を通じて遺伝的撹乱を起こすという懸念がある。また、わが国野外での本種の分布地域は関東以西の海岸部に限られるが、近年の気候の温暖化現象に伴い、その分布を北方に広げてきたと考えられている。他のOriusは広範囲に分布しており、本種の分布拡大過程を詳細に解析することが、種間競争の解明や地球温暖化の影響を明らかにするためには、必須である。本研究課題では、種内多型に富んだマイクロサテライトマーカーの作出・解析を通じてこれら問題を解明する。 本年度は、タイリクヒメハナカメムシ野外7個体群および生物農薬系統2系統の遺伝的多様性を、マイクロサテライトマーカー6遺伝子座を用いて測定したところ、生物農薬では有意に多様性が低下していることが明らかになった。これは、飼育開始時の創始者効果や飼育時のボトルネック、遺伝的浮動などの影響であると考えられた。生物農薬の特異性は、野外での定着を検出するのに役立つものと期待できる。また、ナミヒメハナカメムシにおいては、ビオチンラベルした反復配列をプローブとして用いて作成したマイクロサテライト選抜ライブラリーから96クローンの塩基配列を得て、そのうち13クローン(遺伝子座)にプライマーを作成した。10-11月には、全国54地点のセイタカアワダチソウ群落からヒメハナカメムシ類8000個体以上を採集し、実験室に持ち帰り凍結保存した。随時DNA抽出・PCRによる種の識別を行い、種構成を調査中である。
|