2006 Fiscal Year Annual Research Report
癌細胞特異的な分子生物学的差異を標的とした抗癌剤の合成研究
Project/Area Number |
18780085
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石神 健 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (70292787)
|
Keywords | 抗腫瘍物質 / Tyroscherin / Laurenditerpenol / 天然生理活性物 / 有機合成 |
Research Abstract |
癌細胞と正常細胞の分子生物学的差異を標的とした2種類の選択的抗腫瘍物質に関して合成研究を行った。 1.増殖因子IGF-1受容体を介したシグナル伝達系の阻害剤であるTyroscherinの合成研究:類縁体合成による構造活性相関研究にも応用可能な合成経路の確立を目的に全合成研究を行った。将来的に左右の構造を変換した類縁体を容易に合成できるよう、Juliaカップリングを用いた収束的な合成経路の確率に成功した。不斉点に関して、左側部分は光学活性原料であるチロシンより誘導されるケトンのsyn選択的な還元を経て、右側部分はプロピオニルオキサゾリジノンの不斉アルキル化を経て構築した。左右両部分のJuliaカップリングはKHMDSを塩基として用いた場合に高いE-選択性を示し、目的のTyroscherinの全合成を達成した。本化合物は最終精製の手法によりNMRの化学シフトが変化するため、まだ天然物との完全な一致を示していないが、誘導化などによる確実な同定を目指しているところである。 2.転写因子HIF-1の阻害剤であるLaurenditerpenolの合成研究:天然物の立体配置のうち現在確定しているのは、左側部分の水酸基の絶対立体配置と右側部分に相当するビシクロ環の相対立体配置のみであるため、まずは立体化学の決定を目的として合成研究を行った。左側部分は効率的に立体配置を決定出来、将来的に立体配置による構造活性相関も検討可能となるよう、Robinson成環反応を鍵反応として非立体選択的な合成を達成したが、立体配置の決定には至っていない。右側部分の架橋環は当初のDiels-Alder反応による構築を断念し、シクロヘキサンジオンよりヨードエーテル化を鍵反応としてラセミ体での合成を達成した。現在は不斉補助基を用いた右側部分の光学活性体合成と、左右両部分のカップリングに関して検討中である。
|
Research Products
(4 results)