2006 Fiscal Year Annual Research Report
リジン代謝制御による神経伝達物質ドーパミンの分泌調節作用に関する研究
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18780102
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
福渡 努 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助手 (50295630)
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Keywords | ドーパミン / 脳機能 / アミノ酸 / アセチルコリン / トリプトファン / リジン / マイクロダイアリシス / 統合失調症 |
Research Abstract |
トリプトファン代謝経路産物キヌレン酸は脳内でニコチン作動性α7アセチルコリン受容体を介して,神経伝達物質グルタミン酸放出を抑制する.リジン分解経路の中間代謝産物αアミノアジピン酸は生理的濃度でキヌレン酸濃度を低下させる.脳内のリジン濃度を調節することにより,キヌレン酸を介してドーパミン分泌を調節する可能性が考えられることから,本研究では,リジンによるドーパミン調節作用を明らかにすることを目的としている.本年度は,リジン単回投与がキヌレン酸およびドーパミンの代謝変動におよぼす影響について検討した.ラットにリジン200g/kgを腹腔内投与し,投与2時間後に脳を摘出し,脳内のαアミノアジピン酸およびキヌレン酸濃度を測定した.大脳皮質,海馬,線条体のいずれの部位についても,αアミノアジピン酸濃度の上昇とキヌレン酸濃度の低下が認められた.この作用はαアミノアジピン酸100mg/kgの投与では認められなかった.ドーパミン作動性ニューロンが多く分布する線条体に透析プローブを移植し,このラットにリジンを腹腔内投与し,透析液中のキヌレン酸およびドーパミン濃度の経時的変化を測定した.リジン200mg/kg投与によって細胞外液中のキヌレン酸濃度の低下とドーパミン濃度の上昇が認められた.リジン500mg/kg投与では変動は大きくなり,持続時間も長くなった.以上の結果から,脳内のリジン濃度が高くなると,リジン代謝産物αアミノアジピン酸の合成量の増加,αアミノアジピン酸によるキヌレン酸合成の阻害,キヌレン酸濃度低下によるドーパミン分泌の促進という一連の機構が働くことが示唆された.
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