2007 Fiscal Year Annual Research Report
大面積風倒発生地における植生遷移とニホンジカにおける利用度の推移
Project/Area Number |
18780109
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
高橋 裕史 Forestry and Forest Products Research Institute, 関西支所, 主任研究員 (60399780)
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Keywords | エゾシカ / 分布 / 生息地 / 大規模撹乱 / 台風 |
Research Abstract |
ニホンシカ(以下シカ)の全国的な密度増加の一要因として、林冠開放をともなう撹乱により繁茂した下層植生がシカの餌資源となったこと(撹乱-シカ増加仮説)が指摘されている。本研究は、2004年台風18号により大面積で風倒が発生し、かつシカ高密度分布域周縁部に位置するとされる、北海道南西部の支笏湖東岸〜樽前山麓域において、大規模撹乱後初期の下層植生とシカによる利用度の推移を記録し、上記仮説を検証するための基礎データを得ることを目的とする。 痕跡に基づく利用度の指標については、調査地が広大なため、充分なデータを得るまでには至っていない。一方シカ密度既知の対照地においてこれまでに蓄積されたデータからシカの個体群密度・資源利用と風倒・剥皮発生の関係を相対化する試みについては、次のような傾向がうかがえた。すなわち、シカが一度高密度に達して強度の剥皮枯死が発生し、選好性の高い樹種や小径木が消失した後は、風倒(病虫害等による樹勢低下も含む)による枯死が剥皮枯死より高頻度に発生すること、しかしなお低頻度ながら発生する剥皮は風倒より樹種選好性が高いことなどである。これらのことから、強度にシカの影響を受けた後の森林において、森林構造の維持・再生のためには立木の保護(剥皮予防)より更新の確保が、一方で生物多様性の維持・再生のためには選好性の高い樹種の保護が、有効であることが考えられる。
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