2008 Fiscal Year Annual Research Report
大面積風倒発生地における植生遷移とニホンジカによる利用度の推移
Project/Area Number |
18780109
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
高橋 裕史 Forestry and Forest Products Research Institute, 関西支所, 主任研究員 (60399780)
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Keywords | エゾシカ / 分布 / 生息地 / 規模撹乱 / 台風 |
Research Abstract |
ニホンジカ(以下シカ)の全国的な密度増加の一要因として、林冠開放をともなう撹乱により繁茂した下層植生がシカの餌資源となったこと(撹乱-シカ増加仮説)が指摘されている。本研究は、2004年台風18号により大面積で風倒が発生し、かつシカ高密度分布域周縁部に位置するとされる、北海道南西部の支笏湖東岸〜樽前山麓域において、大規模撹乱後初期の下層植生とシカによる利用度を記録し、上記仮説を検証するための基礎資料を得ることを目的とする。風倒木処理後の再造林地(植栽後1〜2年)、風害が軽微であった広葉樹二次林と針葉樹人工林の三つの植生タイプにおいて100m2の調査区を4個ずつ設定した。シカによる利用度の指標として、北海道による植生指標を参考に、稚樹(高さ50cm以上かつ胸高直径1cm未満)および樹木(胸高直径1cm以上かつ生枝下高2m以下)の枝葉・幹に採食痕のある株の比率を求めた。シカ密度指標としては、調査区における糞塊カウント、日中の植生指標調査中の生体目撃頻度記録と夜間に調査区付近林道のスポットライトカウントを行った。その結果、シカの密度指標が、糞塊、昼または夜の生体目視のいずれか単独ではほとんど検出できない低いレベルであっても、エゾニワトコ、エゾアジサイ、オオカメノキなどの低木類、再造林地ではとりわけタラノキ、ノリウツギなどの先駆種、林床ではオガラバナ、べニイタヤなどカエデ類に顕著に稚樹食い、枝葉食いの痕跡がみとめられた。撹乱跡地が餌場となっていることが示された。シカ密度が低い時・場所では先駆種などの低木類、高木稚樹がシカの利用度指標として有効であること、また、これを用いることにより、早期にシカの影響を検出し、対策できる可能性が示唆された。
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