2006 Fiscal Year Annual Research Report
樹皮下光合成を考慮した個体の二酸化炭素交換能力の評価
Project/Area Number |
18780114
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 研究員 (90422740)
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Keywords | ブナ / 樹皮光合成 / 樹皮呼吸 / 当年枝 / 季節変化 / 冬季の光阻害 / Q10 / CO2リサイクル |
Research Abstract |
新潟県苗場山の標高900mにある70年生ブナ林において、当年シュートのガス交換速度をLI-6400と針葉樹用チャンバーで測定した。シュートは上層木3個体の樹冠最上部(25m)から、5月より1ヶ月間隔で採取した。葉を全て除去した後にビニールチチューブをつないで常に水が供給されるようにした。ガス交換速度の測定には4〜6本のシュートを使用した。人工光源を利用して、光強度(PPFD)とガス交換速度の関係と、光照射時(PPFD=700umolm-2s-1)と暗処理時(PPFD=0umolm-2s-1)における温度とガス交換速度の関係を測定した。 PPFDとCO2放出速度(R)の関係は、PPFDの上昇とともにRが直線的に減少しPPFD=200umolm-2s-1付近で安定する飽和型の曲線関係を示した。暗処理時のR(呼吸速度)とPPFD=700umolm-2s-1のR(みかけの呼吸速度)の差から、樹皮光合成速度(P)を計算すると0.4〜0.7umolm-2s-1であった。これは呼吸速度の約50〜80%あり、光照射時には呼吸によって発生したCO2の半分以上が樹皮光合成によって再利用されることがわかった。この傾向は季節を通して同じであった。 呼吸速度は温度の上昇とともに指数関数的に増加した。Q10(10℃の温度変化に対するRの変化率)は1.5〜1.7であり、季節を通して一定であった。みかけの呼吸速度も、温度の上昇とともに増加したが(Q10=1.6〜1.8)、その増加幅は非常に小さく、呼吸速度とみかけの呼吸速度の比は温度に関わらず50〜80%で推移した。そのため、温度とPの関係も指数関数的に増加した。シュートの呼吸速度は温度の上昇によって大幅に増加するが、光照射時ではPも同様に増加して、みかけの呼吸速度を非常に小さく抑えることがわがった。
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