2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18780117
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
津山 孝人 九州大学, 農学研究院, 助手 (10380552)
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Keywords | 光合成 / ストレス / 耐性 / 樹木 |
Research Abstract |
間欠パルス法は暗所で葉に強いパルス光を繰り返し照射することから成る。例えば、1秒間の持続期間の飽和光パルスを5分間に一度の頻度で繰り返し葉に照射する。このような間欠飽和光パルスの照射は光合成の阻害を引き起こすが、その阻害の程度から光合成のストレス耐性(活性酸素の消去能力)を評価する。暗所では、活性酸素の生成を抑制する機能(励起エネルギーの熱散逸機能)が働かない。このような条件下では、パルス光によって発生する活性酸素がその消去系で無毒化・除去されない限り、光合成の阻害を引き起こす。従って、活性酸素の消去能力が高い程、パルス光による光合成の阻害は小さくなると考えられる。なお、本手法はカタラーゼ導入ユーカリの高い酸素毒耐性を評価することには成功している。 本手法は未だ経験的なデータに基づいており、暗所での飽和光パルス照射が引き起こす現象については不明な点が多い。そこで、本手法の特徴である暗所での処理について詳細に解析した。連続光の非存在下すなわち暗所下では、FNR(ferredoxin NADP^+ oxidoreductase)は失活している。この状況下では飽和光パルスが引き起こす(一時的な)電子の流れは光化学系Iの下流で遮断されることが予想される。行き場を失った電子が酸素を還元すると活性酸素が発生し、光合成の阻害が引き起こされると考えられる。しかし、たとえFNRが失活していても、Fd(ferredoxin)までの電子伝達は可能である。Fdまで電子が流れれば光化学系Iサイクリック電子伝達が可能であり、酸素還元は回避され得る。この点についてシロイヌナズナ光化学系Iサイクリック電子伝達突然変異株を用いて調べると、サイクリック電子伝達による酸素還元反応の回避は無視できる程度の大きさであることが分かった。 各種樹木を用いて間欠パルス法を試してみると、野外で生育する樹木は暗所での飽和光パルスの照射に対し一様に耐性が高いことが分かった。植物培養機(グロースチャンバ)内で生育させた植物は同処理に対する感受性が高いことと対象的であった。
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