2009 Fiscal Year Annual Research Report
島嶼生態系における侵入種の拡散および適応機構の解明
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18780125
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
山下 直子 Forestry and Forest Products Research Institute, 関西支所, 主任研究員 (70353901)
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Keywords | 森林生態 / 保全 / 外来種 / 海洋島 / 種子散布 / 根絶 |
Research Abstract |
小笠原諸島において、アカギ上木の除去から1年経過した時点において、散布される種子の種類数よりも発生する種数がかなり少なく、発生を抑制している要因の1つとして、クマネズミによる食害が考えられた。短期的には上木のアカギを1回除去するだけでは、在来種の発生、定着を促進する効果は低いと考えられる。アカギ上木の除去によって、林内は以前に比べて明るくなり、ウラジロエノキなどのパイオニア性樹種やモクタチバナなどの遷移後期樹種の発生が確認された。しかし、林内はパイオニア性樹種が定着できるほど明るくなく、むしろ埋土種子由来のアカギ実生の生存率を高め、定着を促進していることが明らかとなった。在来種の定着率を高めるためには、上木除去後の比較的早い段階で、発生したアカギ稚樹の除去をおこなうことが不可欠である。上木除去区のトラップ内に、鳥散布によるアカギ種子落下が確認され、今後モニタリングを継続することによって再加入リスクを評価する必要がある。 林内土壌中の埋土種子の種組成との関係を明らかにし、外来種の在来林への侵入リスクを埋土種子構造から解析した。その結果、発生した実生の80%が草本で、最も多かったのは外来種のイヌホオズキであった。木本で最も多かったのは、アカギの実生で、侵入の著しい湿性高木林だけではなく、乾性低木林の土壌にも埋土種子化していることが明らかとなった。今回調査区を設定した林分は、上木に外来樹種の入っていない場所であり、外来種の種子は、ヒヨドリなどにより散布されたものと考えられる。これらの外来種の埋土種子は、台風などの撹乱により林冠ギャップが形成された後、光環境の変化と地温の上昇をトリガーとして発芽し、将来的には在来種に置き換わる危険性があると思われる。
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Research Products
(6 results)