2008 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖産野生型コイの遺伝的簡易識別法の開発と交雑状況の把握
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18780142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬渕 浩司 The University of Tokyo, 海洋研究所, 助教 (50401295)
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Keywords | コイ / 琵琶湖 / 在来系統 / 導入系統 / 核ゲノムマーカー / 保全 / 交雑 / SNP |
Research Abstract |
最終年度である昨年度の研究では、前年度までに開発した核ゲノムのSNPマーカーを、琵琶湖の複数地点で採集されたコイについて適用し、琵琶湖におけるコイの交雑状況の把握を行った。その結果、解析された個体の多くは、日本在来の「在来系統」と、大陸から導入された「導入系統」との交雑個体であると判定されたが、琵琶湖の北部では純粋かそれに近い在来系統の核ゲノムを持つ個体が多く出現する一方、南部では純粋かまたはそれに近い導入系統の核ゲノムを持つ個体が多く出現した。このような傾向は、ミトコンドリアDNAハプロタイプの出現傾向とも整合的であった。 以上の結果から、現在の琵琶湖におけるコイの交雑状況は以下のようであると推察された。すなわち、琵琶湖の南部には、導入個体からの遺伝的影響を強く受けた個体群が存在する一方で、北部には、その影響をまだ少ししか受けていない日本在来系統の個体群が残存している。本研究によって明らかにされたこのような状況は、世界的にも貴重な日本在来コイの保全という観点から非常に重要な意味を持つ。つまり、本研究の結果は、琵琶湖北部の個体群は、保全上非常に重要な個体群であることを示している。本研究の結果はさらに、南部の個体群は導入系統の遺伝的影響を強く受けているのに、なぜ北部の系統はそれほど影響を受けていないのかという問題も提起している。この問題への回答は、在来コイの保全の上で直接的に重要なだけでなく、琵琶湖における魚類の生態を知る上でも非常に興味深いものである。
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