2006 Fiscal Year Annual Research Report
海産魚における代理親魚養殖の確立に向けた生殖細胞の異種間移植技術の開発
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18780144
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
竹内 裕 東京海洋大学, 先端科学技術研究センター, 助手 (70418680)
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Keywords | クロマグロ / 生殖細胞 / 精原幹細胞 / 異種間移植 / vasa遺伝子 / 絶滅危惧種 / 種苗生産 / 養殖 |
Research Abstract |
申請者は、近年、サケ科魚類を用いて、異種間での生殖細胞移植技術(代理親魚養殖)を開発し、"ニジマスの卵や精子を生産するヤマメ"を作出した。この結果は、大型魚種の卵や精子を小型魚種に作らせることで、短期間かつ省スペースで、大型魚種の種苗生産が可能であることを示している。本研究では、代理親魚養殖を海産魚へ応用することで、"マグロの卵や精子を生産するサバ"の作出を目指す。本申請期間内では、小規模かつ周年での種苗生産が可能なニベを用いて、海産魚における生殖細胞移植技術を確立する。ニベは、マグロ類を含む多くの海産魚と類似した分離浮遊卵を産するため、本研究のマグロ類への応用を考えたうえで優れたモデル魚である。具体的には、海産仔稚魚において生殖細胞移植実験を行うためには、どのような日齢の個体が宿主として適しているのか?に焦点を当て、宿主の腹腔内へ移植したドナー細胞の追跡、宿主腹腔内でのドナー細胞の生残、および、ドナー細胞の宿主生殖腺内への移動と取り込みについて詳細な解析を行った。ドナーには、ニベおよびオオニベ(ニベの同科異属)の未成熟精巣より得られた精原細胞を用いた。酵素処理により分散した各精巣由来の細胞は、赤色蛍光色素(PKH26)を用いて標識した後、顕微注入法により様々な大きさのニベ仔稚魚腹腔内へ移植した。移植実験に最適な宿主の発生段階を調べるため、1)細胞移植時のハンドリングに耐えうる、2)宿主の腹腔内でドナー細胞が免疫拒絶されない、3)宿主の生殖腺内にドナー細胞が取り込まれる、の3点を指標として移植後の観察を行った。移植後蘇生槽へのBSA添加により、全長4mmの宿主に対し、生残率80%(移植後24h)で移植操作が可能となった。また、移植時の宿主全長15mmのとき、移植後3週間にわたり、同種・異種由来のドナー細胞が拒絶されなかったことから、全長4-15mmの宿主に対して、物理的かつ免疫学的に移植が可能であることが判明した。これらの宿主に対し、ニベ精原細胞を移植し、3週間後に観察した結果、全長10mmの宿主136尾に移植した場合、5尾(3.6%)において、宿主生殖腺へのドナー由来細胞の生着を観察した。本研究により、海産仔稚魚を宿主とした精原細胞の異種間移植実験が可能となったことから、代理親魚養殖の海産魚への展開が期待される。
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Research Products
(4 results)