Research Abstract |
渦鞭毛藻Alexandrium属数種は,サキシトキシン等の強力な神経毒を生産し,麻痺性貝毒の原因種として知られている。日本において本藻は,瀬戸内海や三陸海岸を中心に春から夏にかけて経年の発生を繰り返しており,養殖漁業や公衆衛生の面で非常に深刻な問題となっている。そのため,本藻による被害防止のための監視体制を整えることは急務となっている。本研究では,麻痺性貝毒の発生状況を正確に把握するとともに,春先の貝毒による被害を未然に防ぐ発生予察法を開発することを目的とした。本年度において行った研究および結果は以下の通りである。 1.大阪湾における定期的サンプリング 平成18年3月〜平成19年3月までの1年間,月一回海水および底泥の定期的サンプリングを行った。サンプリングは,大阪湾5地点の沿岸域で行った。得られたサンプルからは,すべてDNAを抽出した。 2.遺伝子マーカーを用いた海水中の有毒・有害プランクトンの個体群集の構造解析 1で得られた平成18年4月DNAサンプルについて,クローンライブラリー法により個体群解析を行った結果,日本ではその発生が確認されていない有毒種Alexandrium minutumの存在が確認された。また,顕微鏡観察では確認されないプランクトン種の存在も多数確認された。これらの結果から,遺伝子マーカーを用いた手法により,より高感度なモニタリングを行える可能性が示唆された。 3.底泥サンプルの培養および個体群解析 有毒・有害プラントンの多くが休眠細胞となって海底に沈降する平成18年11月,および大増殖(貝毒発生)直前の平成19年2月の底泥サンプルを,藻類培地に摂取し大増殖時の条件で培養した。その結果,赤潮や貝毒の原因となる有毒・有害プランクトンを含む多種多様な種が増殖した。これら増殖したプランクトン種の詳細な解析により春の大発生の予察ができると考えられた。
|