2006 Fiscal Year Annual Research Report
海からの遺伝子汚染-海洋における薬剤耐性遺伝子の分布とヒトへの伝播
Project/Area Number |
18780147
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
野中 里佐 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助手 (70363265)
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Keywords | 抗生物質 / テトラサイクリン / 薬剤耐性 / 薬剤耐性遺伝子 / tet(M) / 養殖場 / 底泥 / 遺伝子数 |
Research Abstract |
本研究ではオキシテトラサイクリン(OTC)投与に伴う養殖場底泥中のtet(M)遺伝子数に与える影響を評価するために以下の実験を行った。5月、6月、8月および9月にOTC投与が行われていた養殖場において、薬剤投与前、中および後である4、5、7、9および12月にイケス直下2地点および約120m離れたコントロール地点において採泥を行った。底泥から直接DNA抽出を行いリアルタイムPCRによりtet(M)のコピー数を測定した結果、底泥中のtet(M)コピー数はOTC投与に伴い増加し9月に最大となった。一方コントロール地点のほとんどのサンプルでは調査期間を通して検出限界以下であった。以上の結果から、投与されたOTCが選択圧として働いた結果、底泥中のtet(M)保有菌を含むテトラサイクリン耐性菌が選択され増加していることが示唆された。またOTC投与終了後3ヶ月目にはtet(M)のコピー数は9月より減少していたものの投与前より高い値を示し、いったん増加したtet(M)遺伝子は投薬終了後も長期間環境中に残存していることが明らかになった。 一方、人間による抗生物質の投与がないと考えられる相模湾および外洋の底泥および南極ペンギン腸内から分離したテトラサイクリン耐性菌からもtet(M)が検出され、本遺伝子が海洋の広い領域に分布していることが明らかとなった。またこれらのtet(M)保有菌は多様であることが明らかになり、自然環境中のさまざまな細菌にtet(M)が分布していることが示された。さらに、tet(M)のシークエンス解析から海洋由来のtet(M)は陸上由来のtet(M)と同一のクラスターに分類されるがペンギン腸内由来のものは別のクラスターを形成することが明らかになり、進化過程において陸上-海洋間でのtet(M)の交雑が生じたこと、ペンギン腸内は独立した環境であることが示唆された。
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