2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18780162
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅原 達也 京都大学, 農学研究科, 助教授 (70378818)
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Keywords | EPA / SREBP / LXR / 酸化 / 脂質代謝 |
Research Abstract |
本研究は、EPAやDHAなどの海洋生物由来高度不飽和脂肪酸(PUFA)の生理機能発現のメカニズムにおいて、これまであまり考慮されていない脂質酸化反応とその生成物の関与を調べることで、生体内酸化反応の生理的意義に関する新たな知見を示し、さらには海産由来PUFAの効率的な有効利用に結び付けることを目的とした。海洋生物に特徴的で豊富に含まれているエイコサペンタエン酸(EPA)は、血栓抑制作用、脂質低下作用、抗炎症作用などの様々な生体機能調節作用をもつことで健康維持や生活習慣病予防に寄与することが知られており、その作用機序についても遺伝子発現制御レベルで明らかにされつつある。一方で、PUFAは、その化学構造から極めて酸化されやすいという特性をもつことから、PUFAのもっ機能の発現メカニズムには、その酸化に対する感受性が重要であり、生成したHUFA酸化物が活性本体である可能性が推測された。この仮説を明らかにするために本年度は、自動酸化によりEPA酸化物を調製し、脂質代謝の制御に関わる転写因子や脂質代謝関連遺伝子の発現への影響をヒト肝臓由来HepG2細胞を用いて調べた。EPAとその酸化物は、LXR(Liver-X receptor)の合成アゴニストT0901357によって誘導したSterol regulatory element binding protein-1c(SREBP-1c)の発現を濃度に依存して抑制した。このときEPA酸化物はEPAよりもより低濃度で、SREBP-1c発現抑制作用を示すことが見い出された。さらに、脂肪酸合成酵素(Fatty acid synthase, FAS)のmRNA発現量のSREBP-1cと同様の結果を示した。また,EPAのSREBP-1c発現抑制作用は、生体内の代表的な抗酸化剤であるα-トコフェロールを添加することで消失することがわかった。以上の結果から、EPAの核内レセプターを介した脂質合成抑制作用には、EPA酸化物が深く関わる可能性が強く示唆され、生体内酸化反応が重要であるものと考えられた。
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