Research Abstract |
平成19年度は,中山間地域を対象とした省力的な農業生産システムの設計を行った。対象地域は,昨年度と同様に岡山県高梁市有漢町S集落である。また,資源の有効利用を目指し,農産物直売所におけるマーケティング戦略を構築した。 1.農家の耕作放棄に至るまでの行動の分析 個別農家レベルの意志決定・行動の観点から,農地利用状況モデルを構築した。具体的には,現在の農地利用状況に基づき,数理計画法を適用することにより,農家行動モデルを構築した。さらに,このモデルを利用し,耕作放棄抑制策の検討を行った。その結果,農家は農地作付け・保全(農地の荒廃が防げる)事により,10,000円/10aの効用を得ていることが推測された。このことが,農家の耕作放棄抑制に大きな効果を得ている事が明らかとなった。また,農地保全には,農地貸借・農作業受託が最も効率的であることを明らかにした。 2.農産物直売所におけるマーケティング戦略の構築 高齢農家の労働力や土地等の地域資源の有効利用方策の一つとして,農産物直売所がある。しかし,直売所数は増加傾向にあり,直売所間の競争が激化している。そこで,岡山県内のM直売所を対象として,(1)消費者の直売所に対するニーズの把握,(2)消費者ニーズに対応したマーケティング戦略の構築,(3)マーケティング戦略実施効果のシミュレーション分析を行った。その結果,農薬50%減(減農薬)は,有効なマーケティング戦略である事が明らかとなった。また,農薬100%減(無農薬)及び有機質肥料のみの農産物の供給に関しては,ニッチマーケット成立の可能性が高いことが明らかとなった。生産記録の付加に関しては,ニッチマーケットが成立したとしても,その市場規模は小さいことが明らかとなった。
|