2007 Fiscal Year Annual Research Report
播種前契約の最適設計に関する計量分析 〜情報の不確実性と非対称性の視点から〜
Project/Area Number |
18780171
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
森高 正博 Kyushu Sangyo University, 商学部, 講師 (20423585)
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Keywords | 農業経済学 / 農林水産物 / 契約取引 / ゲーム理論 / 意.思決定論 |
Research Abstract |
本研究は、青果物・米における播種前契約取引について、取引に内在するコンフリクト、リスクの大きさ、契約内容の適切な妥協点などを分析するため、取引モデルの構築とその定量分析法の開発を目的とする。 初年度は、広範な事例に対するヒアリングを行い、契約に対する考え方、評価基準を抽出した。その際、契約関係が継続的に成立していくために重要と考えられている点は、契約後の取引相手の機会主義的行動の有無、取引を改善していく意思・取り組み、などであった。すなわち、契約が双方にとって利益が高いという点は、継続的な契約取引の成立に必ずしも重要でないという仮説に至った。 そこで、本年度は、播種前契約取引の継続性について理論的に考察した。まず、取引当事者の性質として、契約内容の履行能力・態度を仮定し、この性質が不完備情報となっている場合の継続的取引ゲームを分析した。分析結果から、1.メリットの追求とは異なる理由、すなわち、取引相手がもつ契約内容の履行能力・態度に関するリスクの存在によって取引が継続する可能性があること、2.売り手と買い手の双方にとって本来望ましい取引相手であっても、取引が継続しないという隘路が存在すること、逆に、3.最良の取引相手でなくても継続的取引が発生する可能性を明らかにした。 次に、取引が継続する中で、取引相手の履行能力・態度が確率的に開示されていく場合、そうした結果を受けて取引相手に対する信頼をどのように改善していくかを、ベイズ更新を利用してモデル化し、この数量化をいかに行うべきか検討した。そして、初期分布の設定によって、取引当事者の様々な態度の変遷を適切に数量化できること、逆に、そうした態度の変遷から初期分布の設定も可能であること例示した。
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