2006 Fiscal Year Annual Research Report
地中点滴灌漑における根群域上部への塩類集積の数値予測とその対策に関する研究
Project/Area Number |
18780180
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤巻 晴行 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 講師 (90323253)
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Keywords | 点滴灌漑 / 塩類集積 / 蒸発 |
Research Abstract |
まず、交互方向陰解法による水移動および溶質移動の数値解析プログラムを作成した。水移動の数値解析では等温水蒸気移動を考慮し、修正Picard型反復法により質量保存に努めた。また、大気境界条件において、塩クラストによる水蒸気通過抵抗を考慮できるようにした。移流分散方程式の数値計算にあたっては、土壌面付近で下方への拡散移動を過大評価するとの知見に基づき、表層2cmにおいて分散長を半分にするオプションを選択できるようにした。 作成した数値モデルの信頼性を検証するため、実験を行った。昨年度は、比較検討をより明確に行うため、土壌面に裸地への地表点滴灌漑条件とした。幅30cm、高さ40cm、奥行き10cmで誘電率水分・塩分センサーを多数挿入したアクリル製土槽に土壌を充填し、一定の気象条件下で右上端の線源からの3000ppmNaCl水溶液の浸潤に伴う塩類集積過程(水分・溶質移動ならびに蒸発量)を測定した。数値解析に必要な水分移動特性ならびに溶質移動特性には、風洞実験とは別個に測定したものを用いた。その結果、数値解析では積算蒸発量を過大評価した。これは、実測値では滴下位置付近にもっとも集積しており、滴下位置のすぐ脇から塩クラストが形成されていたにもかかわらず、数値解析ではそのような分布は得られず、若干離れた位置に集中して集積していたことに起因するものと思われる。理論的には滴下位置付近では外側に向かう移流が卓越し、滴下位置付近の濃度は灌概水のそれに近くなるはずであるが、実際にはそうならなかった。この原因を今後解明していきたい。 塩類集積対策として、多量に潅水することにより土壌面に塩分を集積させ、それを剥離除去する方法も考えられるため、地中点滴灌漑といえども湿潤土壌面における塩類集積の正確な予測は不可欠である。これに関連した論文の閲読対応にも取り組み、12月に下記論文が掲載された。
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