2006 Fiscal Year Annual Research Report
アカネ属の基礎生態の解明および保全のための水管理手法の検討
Project/Area Number |
18780188
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Research Institution | Akita Prefectural College of Agriculture |
Principal Investigator |
神宮字 寛 秋田県立大学短期大学部, フィールド教育研究センター, 准教授 (10299779)
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Keywords | アカネ属 / 孵化速度 / 水管理 / 保全 / 農法 |
Research Abstract |
18年度は,アキアカネ,ナツアカネ,ノシメトンボ卵の孵化におよぼす光と水温の影響を検討した.3種の卵の採集は,秋田県大潟村の水田で行い,採集した卵は水田圃場で2005年10月から2006年の4月まで保管したのち,水田入水期にあたる4月下旬に実験に供した.実験では,明条件(明期14hr・暗期10hr)の水温23℃,18℃,13℃および8℃,ならびに暗条件・23℃の計5条件下に卵をおき,孵化の調査を行った.実験は3反復で行い,1反復に供した卵数は50とした. アキアカネとナツアカネの卵は,23℃・暗条件において孵化が確認された.ノシメトンボの卵は暗条件下で孵化が観察されなかった.アキアカネ卵およびナツアカネ卵の23℃・暗条件と23℃・明条件の孵化率には有意差が認められなかった.しかし,両種とも孵化期間および斉一孵化係数には有意な差が認められ,暗条件では明条件に比べ孵化期間,斉一孵化係数が増大した(ANOVA P<0.01).代かき作業で生ずる濁水や卵の埋土は,卵を減光あるいは暗条件下におくことが想定される.上記の結果から,そのような光条件の変化はアキアカネ卵,ナツアカネ卵の孵化には大きく影響しないがノシメトンボ卵の孵化には影響をおよぼすと推察される. アキアカネ,ナツアカネ,ノシメトンボの卵の孵化の様態には違いが見られた.アキアカネ卵の平均孵化日数は,水温間で有意な差が認められ(ANOVA P<0.01),低温ほど大きな値を示した.斉一孵化係数は,水温が高い条件で斉一的に孵化が起こる傾向にあった.ナツアカネ卵の平均孵化日数は23℃条件と18℃,13℃条件の間に有意な差が確認された(ANOVA P<0.01).孵化期間は,18℃条件が41.0日を示し,23℃の13日,13℃の20日よりも有意に大きい値を示した(ANOVA P<0.01).ノシメトンボ卵の平均孵化日数および斉一孵化係数には水温間で有意な差が認められなかった.孵化期間は,18℃条件において最も長期化し,有意な差が認められた.
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