2006 Fiscal Year Annual Research Report
低光量青色光刺激が葉の形態形成制御機構に与える影響
Project/Area Number |
18780190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
兼子 敬子 (大橋 敬子) 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (50332599)
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Keywords | 青色光 / 葉面積 / 細胞伸張 / ホウレンソウ / 夜間補光 |
Research Abstract |
明期中の総光量の1%以下の微弱な赤色光を暗期開始直後に,または微弱な青色光を暗期終了直前にホウレンソウに照射すると,バイオマスが20%以上増加することが報告された(羽生・庄子,2000)。この現象が普遍的に起こることが理解されたならば,少ない消費電力で植物生産を向上させる画期的な光制御技術を提案できるだろう。しかしながらこのバイオマス向上のメカニズムは不明である。このバイオマス増加は葉面積の拡大を伴っているごとから,刺激光照射による葉の光合成よりもむしろ直接的に葉面を拡大させ,そのことが明期中の個体全体での光合成と成長の促進につながったと予測し,この問題ついてホウレンソウを材料として解析を行ってきた。栽培期間を通じた暗期開始直後の赤色光刺激または暗期終了直前の青色光刺激によって,ホウレンソウの全乾物重の増加とともに,葉面積が増加した。光学顕微鏡によるホウレンソウ葉の断面を観察から,暗期開始直後の赤色光刺激は柵上組織葉肉細胞の水平方向のサイズを増加させることが分かった。暗期終了直前の青色光刺激では葉肉細胞のサイズは変化しなかった。このことから,暗期開始直後の赤色光刺激は葉肉細胞を伸張させること,また暗期終了直前の青色光刺激は葉肉細胞の数を増加させることによって,葉の展開を促進することが示唆された。また,暗期終了直前の青色光刺激によって葉厚が増加した。これは柵状組織の縦方向(向背軸方向)の細胞伸張と海綿状組織の厚さによるものであった.以上の結果は,我々の上記の推測を指示するものであったと考える.次年度においては,暗期中の光刺激は細胞伸張と細胞分裂に関わる遺伝子の発現に影響を及ぼすのか確認する.また,ホウレンソウ葉の光合成特性についても解析する予定である.
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