2007 Fiscal Year Annual Research Report
勾配磁界による冠水根系への酸素誘導による植物発育の促進
Project/Area Number |
18780192
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
谷野 章 Shimane University, 生物資源科学部, 准教授 (70292670)
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Keywords | 化学物理 / 磁性 / 農業工学 / 園芸学 / 植物 |
Research Abstract |
永久磁石近傍の勾配磁界によって常磁性酸素分子に作用する磁気力を利用して,冠水植物への酸素供給を行うための以下の研究を実施した.研究の手順は次の通りである.まず,磁束密度の最大値が0.63T,磁束密度の大きさと勾配の積の最大値が44T^<2>/mの永久磁石の上に10μL/穴のイオン交換水を注いだPCRプレートを置いた.そのPCRプレートの1穴に1粒の発芽直後のタイムThymusvulgarisを移植した.タイムを選択した理由は,数種予備的に実験した種子の中で,発芽および初期成長速度が揃っていて,種子の大きさが10μLのイオン交換水中に冠水するという目的に適っていたためである.冠水したタイム種子を気温と相対湿度を制御した暗室中に24時間静置した.24時間後に実体顕微鏡で観察および写真撮影した.撮影した写真から幼根の長さ,太さ,根毛の長さ,根系の投影面積を計測した.磁束密度の異なる場所間で前述の根の生長パラメーターをANOVAおよびTUkey testで比較した.その結果,非冠水のポジティブコントロール群の根の生長パラメーターは冠水処理群のそれらよりも有意に大きかった.このことは,冠水処理が植物の初期生育を有意に遅らせることを示した.しかしながら,冠水処理した種子では磁束密度の違い(酸素に働く磁気力の違い)とは無関係に,総じて根の生長パラメーターの値が小さかった.これらの結果から,永久磁石近傍の勾配磁界によって常磁性酸素分子に作用する磁気力を利用して,冠水植物へ酸素供給するという物理化学的手法は,少なくともタイム種子では根の生長に影響を及ぼし得ないことが明らかとなった.以上の結果を専門誌に投稿した.さらに,以上の結果を2008年6月の国際会議で発表する.
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