Research Abstract |
ディーゼルエンジンは,排出ガス中のNOxや浮遊粒子状物質(黒煙等)の健康に及ぼす影響が懸念されており,2003年から農耕車を含む特殊自動車のエンジンの排出ガス規制がスタートした。黒煙の除去方法として最も有力なものはディーゼル・パーティキュレート・フィルタ(DPF)といわれているが,一般的に高価である。そのフィルタの主成分は二酸化珪素である。そこで,本研究では,南九州に豊富に存在する火砕物質で,二酸化珪素を主成分とする軽石をフィルタの材料として黒煙の除去を試みた。 エンジンは単気筒空冷式ディーゼルエンジン(定格出力3,1kW,定格回転速度1800rpm,排気量211cm^3,直接噴射式)を用いた。燃料は軽油および廃食油を精製したバイオディーゼル燃料(BDF)を使用した。黒煙の測定には,光透過式スモークメータを用いた。 排出ガスの浮遊粒子状物質除去フィルタ(軽石DPF)を試作した。フィルタ部は,亜鉛鋼板製のダクトを利用し,エンジンのマフラ出口に接続した。フィルタの大きさは直径200mm,長さ200mm,容積6.28Lである。フィルタ資材には,軽石を用いた。軽石は,メッシュ径が2.5mm,5.0mm,9.5mmのふるいでふるい分けしたものをそれぞれフィルタ部に充填し,軽石の大きさと浮遊粒子状物質の除去の関係を求めた。 フィルタはエンジン運転中に目詰まりを起こすことが考えられるので,微差圧変換器でフィルタの入口と出口の差圧を測定した。また,燃料,吸気,潤滑油,マフラ出口,フィルタ内部の温度を測定した。 フィルタの有り無しの条件で,出力性能試験を行った。出力,燃料消費量にフィルタの有無の差は見られなかった。排気煙濃度は,軽石の粒径が小さくなるほど低下したが,大きな低減効果は得られなかった。 燃料にBDFを使用した場合,軽石DPFと組み合わせることで,約29%排気煙濃度が低下した。 軽石DPFによるNOxの低減効果は観察されなかった。
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