2006 Fiscal Year Annual Research Report
ブタおよびイノシシにおけるエネルギー代謝制御に関する遺伝子多型と形質との相関解析
Project/Area Number |
18780212
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
田中 和明 麻布大学, 獣医学部, 講師 (50345873)
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Keywords | ブタ / ADRB3 / 遺伝子多型 / SNPs / イノシシ / エネルギー代謝制御 / 品種改良 / 産肉形質 |
Research Abstract |
我々は、ブタとその野生種であるイノシシを対象としてエネルギー代謝制御に関わる遺伝子の配列決定および多型解析を行った。対象とした遺伝子の一つであるβ3アドレナリンレセプター遺伝子(ADRB3)の結果について概要を述べる。 ADRB3は、Gタンパク共役膜7回貫通型受容体であり、エネルギー恒常性の制御に関与している。我々は、野生イノシシおよび家畜ブタにおいて約2600塩基対からなるADRB3遺伝子の配列を決定した。その結果、47箇所の多型部位で構成される6種類のハプロタイプを検出した。これらの配列はDDBJにAB252778からAB252782までのアクセッション番号で登録を行った。さらにこれらの配列をアミノ酸配列に翻訳し、アミノ酸置換を伴う3つの対立遺伝子を発見した。新規に発見された対立遺伝子の1つは、第2エクソン領域にチミンの1塩基挿入が存在し、これによって生じるフレームシフトにより、C末端側の2アミノ酸残基を欠損するレセプターをコードしていた。 さらに、チミン挿入型対立遺伝子(以後T6型)の野生イノシシ、東南アジア在来ブタおよび、欧米原産の改良品種における分布を調査した。T6型対立遺伝子は、アジア産イノシシおよび、東南アジア在来ブタに高頻度で存在し、改良品種にも低い頻度ではあるが幅広く分布していた。このことから、ADRB3遺伝子の第2エクソンにおける1塩基挿入変異は、ブタの家畜化が行われる以前にアジア地域のイノシシ集団に存在したことが示唆された。欧米原産の改良品種に存在するT6型対立遺伝子は、18世紀・19世紀に行われたアジア産ブタを用いた品種改良によってアジア由来のブタから遺伝子流入が生じたためだと考えられる。 現在、ADRB3遺伝子の多型を高頻度で保有しているデュロック種の系統を用いて産肉形質との相関解析を行っている。
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