2006 Fiscal Year Annual Research Report
植物凍結下における生理・生化学的解析と凍結傷害回避機構の解明
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18780242
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
河村 幸男 岩手大学, 21世紀COE, 助教授 (10400186)
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Keywords | 凍結耐性 / 植物 / シロイヌナズナ / 細胞膜 / シナプトタグミン / 細胞膜修復 / プロトプラスト / 組織切片 |
Research Abstract |
本年度は、まずシロイヌナズナ葉より生きた切片を作製し、組織におけるカルシウム依存性凍結耐性の検討を行った。その結果、氷晶が細胞膜に近接する場合に、この凍結耐性が関与する可能性が示された。動物細胞ではシナプトタグミンが細胞膜修復におけるカルシウムセンサーであることが報告されている。そこでAtSytAのカルシウムセンサーであるC2Aドメインに対するペプチド抗体を作製した。この抗体の存在下で凍結耐性試験を行ったところカルシウム依存性凍結耐性が著しく阻害された。C2Aドメインは細胞質側に存在するため、凍結もしくは融解中に必ず膜の完全性が崩壊しなければ抗体は作用できない。この結果は、カルシウム依存性凍結耐性が細胞膜修復に因るものであることを示す。この様に、細胞膜修復は氷晶が細胞膜に近接するときに生じる傷害の緩和に関与する可能性があることが明らかとなり、細胞膜修復は凍結過程での膜系のダイナミックな変化を知るための一つの手がかりとなる。次に、植物体での細胞膜修復と凍結耐性の関係を調べるために、昨年度作製した低温期特異的にRNAi効果を発動させ低温期にのみAtSytAをノックダウンするシロイヌナズナ変異体を用いて凍結耐性試験を行った。プロトプラストもしくは本葉組織切片においてはカルシウム依存性凍結耐性が著しく阻害されることが明らかとなった。一方、コントロール株とAtSytA RNAi変異株をプレートで生育させ、環境試験器中で凍結し融解後の再成長の有無を調べたが、2つの株間で顕著な差は見られなかった。この原因として、植物体の場合、組織内での凍結様式がプロトプラストや組織切片での凍結様式と異なることが考えられる。今後は、変異株を用いて更に様々な凍結パターンを試すことにより細胞膜修復がどのような凍結条件のときに生じるかを明らかにすると共に、凍結過程での細胞膜と内膜系タンパク質の変化の解析を主にプロトプラストの系で行う予定である。
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