2007 Fiscal Year Annual Research Report
植物凍結下における生理・生化学的解析と凍結傷害回避機構の解明
Project/Area Number |
18780242
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
河村 幸男 Iwate University, COE准教授 (10400186)
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Keywords | 凍結耐性 / 植物 / シロイヌナズナ / 細胞膜 / 内膜 / 細胞膜修復 / SNARE / シナプトタグミン |
Research Abstract |
本年度はます、AtSytA RNAi変異株とT-DNA挿入変異体株の植物体を用いた凍結耐性試験を行った。その結果、-8℃から-14℃の凍結温度で生じる傷害にAtSytAが関与することが明らかとなり、この温度域で、凍結過程での膜系のダイナミックな変化が生じている可能性があることが示された。次に、膜修復機構において、膜融合にはSNAREと呼ばれる3種のタンパク質群、すなわち、シンタキシン、シナプトブレビン、SNAPが関与すると推定されている。一方、SNAREには多数のアイソフォームが存在するため、まずマイクロアレイデータベースより、低温馴化過程で増加するものを選び、それらの共通配列を用いてシンタキシン、シナプトブレビン、SNAPのペプチド抗体を作製した。粗膜画分を使用し、得られた抗体の特異性を検証したところ、シンタキシンとシナプトブレビンのペプチド抗体は予想される分子量サイズの近く、すなわち各々約38kDaと約28kDaにバンドが観察されただけでなく、両者共に約50kDaの位置にもバンドが観察された。また、SNAPは約30kDaのタンパク質であるが、約50kDaの位置にのみバンドが検出された。さらに、細胞膜画分を用いたところ、シンタキシンとシナプトブレビンの抗体は各々約38kDaと約28kDaの位置にのみバンドが検出され、SNAPは検出されなかった。SNAREはSDS耐性な強固な複合体を形成することが知られており、50kDaのバンドはSNARE複合体であり、またこの複合体は細胞膜には存在しないことが予想された。次に、-10℃で凍結し、その後融解したシロイヌナズナより粗膜画分を分画し、SNARE抗体を用いてイムノブロッティングを行った。その結果、シナプトブレビンとその複合体、そしてSNAP複合体は凍結後に増加することが示された。これらの変化は、凍結中の膜のダイナミクスを示す可能性がある。次に、ショ糖連続密度勾配超遠心法により粗膜画分を分画を検討し、ER画分と細胞膜画分の分離に成功した。今後、得られた抗体とAtSytA変異体株を利用し、SNAREタンパク質の凍結融解前後の変化の定量的解析と同定を試みる。
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