2006 Fiscal Year Annual Research Report
温度制御による結晶化を利用したDNA薬剤に関するX線結晶解析
Project/Area Number |
18790030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
茶竹 俊行 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (30383475)
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Keywords | 核酸 / 薬剤 / 放射線・X点・粒子線 / 結晶化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、独自に開発した温度制御による結晶化法を用いることにより、DNAのX線結晶解析の効率を飛躍的に向上させ、構造に基づいた核酸系薬剤のドラッグデザインへの基盤を確立することにある。初年度である昨年は、その試金石として1種類のDNA分子を様々な塩濃度下で結晶化して、A型、B型、Z型のDNA構造を人工的に作り出す実験を試みた。この実験はこれまで品質の悪いDNA繊維でしか成功していない。これに成功すれば、DNA薬剤における構造の設計の大きな手がかりとなることが期待される。しかも、本結晶化法で始めて可能となる実験である。解析にはDNA d(CGCGCG), d(GCGAAAGC), d(CGCGAATTCGCG)を選択した。特にd(CGCGCG)は、B型⇔Z型が原因と思われる結晶形変化の予備実験結果が報告されており、有望なDNA配列である。 受託合成したDNAをゲルろ過クロマトグラフィーにより精製して実験に用いた。まず、結晶化溶液中でのDNAの変性温度(Tm値)を決定した。得られたTm値は35-60℃であり、液温がTm値を跨ぐように、高温側から低温側へと変化させる様に実験を計画した。結晶化溶液を65℃から25℃まで5℃/dayで減少させて、9日で結晶化を完了した。2種類のMgCl_2濃度(20mM,200mM)と2種類のMPD濃度(10%,30%)を組み合わせた4条件で実験を行ない、MgCl_2 20mM-MPD30%の組合せで3種類のDNA全てで結晶を得ることに成功した。4条件の全てで結晶の得られたd(CGCGCG)については、MgCl_2濃度を広範囲に振って(0mMから500mM)様々な塩強度下で結晶を作成した。 次に放射光(Spring-8)を用いたX線回折実験を行い、低MgCl_2濃度結晶(0-20mM)については0.9-1.1Aの高分解能データの収集に成功した。中濃度(20mM-100mM)、高濃度(100mM-)については逐次測定予定である。これらのデータを用いてワークステーションで立体構造を決定し、塩強度変化によるDNAの構造変化を追跡する予定である。
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