2006 Fiscal Year Annual Research Report
アポリポ蛋白質A-Iの立体構造と脂質膜結合機構の解明
Project/Area Number |
18790034
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 将史 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (40411904)
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Keywords | アポリポ蛋白質 / 高密度リポ蛋白質 / 脂質-蛋白質相互作用 |
Research Abstract |
高密度リポ蛋白質の主要構成蛋白質であるアポリポ蛋白質(アポ)A-Iは、末梢細胞からコレステロールを引き抜き、肝臓へと運搬する、いわゆるコレステロール逆転送系を担うことで抗動脈硬化作用を発揮する。これまでの研究から、アポA-IのN末端とC末端はそれぞれ独立したドメイン構造を形成しており、N末端側はαヘリックスに富むバンドル構造を、C末端側は比較的ランダムな構造をとっていることが推定されている。断片化したペプチドや欠損変異体を用いた研究から、アポA-IのC末端側は脂質結合性の高い領域であることが知られている。一方、N末端側は種差間でアミノ酸配列が非常によく保存されていることから何らかの重要性を持つ領域だと考えられているが、その役割についてはあまり解明されていなかった。 アポA-Iのプロリン置換変異体を大腸菌によって発現、精製した。円二色性(CD)や蛍光の測定により、塩酸グアニジンや熱に対する蛋白質の安定性を評価した。さらには、環境応答性色素ANSの結合実験により、変異の導入によって水中に露出した疎水性領域の定量的評価を行った。その結果、N末端で最も疎水性の高い18番目のチロシン残基を含む領域がαヘリックスを形成し、バンドル構造の安定性維持に寄与していることが明らかとなった。 次に、脂質粒子への結合性を^<14>Cで標識したアポA-Iの各種変異体を用いて、ゲルろ過法により評価した。その結果、C末端の欠損変異体は著しい結合性の低下を示し、C末端側が脂質膜への結合に必須であることが確認された。しかしながら、C末端の欠損にもかかわらず、N末端にプロリンを導入しバンドル構造が不安定化した蛋白質では、脂質膜結合性が回復した。すなわち、アポA-IのN末端領域は、ヘリックスバンドル構造の安定性を制御することで脂質膜への結合性を制御していることが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)