2006 Fiscal Year Annual Research Report
ホスファチジルイノシトール3リン酸5ーキナーゼの機能解析
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18790041
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
高須賀 俊輔 秋田大学, 医学部, 助手 (90375262)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / 遺伝子改変マウス / 臓性内胚葉 |
Research Abstract |
生体膜を構成するイノシトールリン脂質は、細胞内シグナル分子として機能することが知られている。イノシトールリン脂質は、そのイノシトール環の3カ所の水酸基におけるリン酸化の有無により、8種類存在している。これらの分子の存在量比が、数十種類以上に及ぶイノシトールリン脂質代謝酵素によって、時間的、空間的に厳密に制御されることによりシグナル分子として有効に機能している。本研究では、この中でもホスファチジルイノシトール3,5-二リン酸を産生する酵素であるホスファチジルイノシトール3リン酸5-キナーゼ(PI3P5K)に着目して、機能解析を行っている。今年度の研究では、独自に作製したPI3P5K遺伝子ホモ欠損胚性幹(ES)細胞及び、PI3P5K遺伝子ホモ欠損マウスを用いて、以下に示す興味深い知見を得た。 PI3P5K遺伝子ホモ欠損ES細胞は、著明な細胞内小胞輸送の異常を来たし、細胞内に酵母の液胞に似た巨大化小胞(空胞)を生じた。この空胞膜上には、初期エンドソームマーカーであるホスファチジルイノシトール3リン酸と、後期エンドソームマーカーであるLAMP1が共局在していた。このことから、初期エンドソームから多胞体形成を経て、後期エンドソームヘと至る輸送経路においてPI3P5Kが重要な役割を担っていることが明らかとなった。PI3P5K遺伝子ホモ欠損マウスは、胎生致死であった。胎生致死機構について詳細な解析を行った結果、PI3P5K遺伝子ホモ欠損マウスは、円筒胚(胎齢5.5日頃)において、胎仔本体を包む臓性内胚葉(visceral endoderm)に巨大な空胞が生じており、9.5日胚までに全例が致死となることが明らかとなった。臓性内胚葉は胎仔の栄養吸収、不要物の排泄に重要な役割を担っていると示唆されているが、その詳細な機構は長らく不明であった。個体発生時の臓性内胚葉細胞小胞輸送の必要性を分子レベルで示した本知見は、重要なものと考えられる。
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Research Products
(1 results)