2006 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞の自己複製・多分化能の維持における転写伸長因子の機能
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18790047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 貴浩 東京大学, 大学院薬学系研究科, 助手 (00323452)
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Keywords | 転写伸長因子 / 造血 |
Research Abstract |
脊椎動物の血液中には多種の血液細胞が存在し、それぞれが個体の恒常性維持に必須の役割を果たしている。これら多種の細胞は、形態も機能も大きく異なる細胞であるが、全ての血液細胞は骨髄にごく少数存在する造血幹細胞から分化して生じると考えられている。一方で成熟血液細胞の寿命は数日から数ヶ月であり、個体の寿命と比較すると短い。それを補うためにヒト成人では毎日一千億もの赤血球や血小板が産生されている。このように、莫大かつ多種多様な細胞を個体の生涯に渡って供給するために、造血幹細胞は下記の2つの能力を持っていると考えられている。すなわち、「1個の細胞から全ての成熟血液細胞を作り出せる(多分化能)」と「自身と同じ性質をもつ細胞を作り続けることができる(自己複製能)」である。造血幹細胞が持つこの能力が、どのような分子的基盤によって維持されているかを明らかにすることは、基礎科学的にも、臨床・創薬の観点からも重要な課題である。申請者はこれまで、転写因子S-IIが造血幹細胞の自己複製能の維持と赤芽球の分化に必須であることを明らかにしている。今年度は、抗酸化物質N-アセチルシステイン(NAC)存在下において、赤芽球の分化が阻害されることを(i)成熟赤血球特異的遺伝子の発現誘導の低下、(ii)成熟赤血球膜上に存在するTER119抗原の発現の上昇抑制、の2点から明らかにした。これらの結果は、正常な赤血球の分化において酸化ストレスが分化シグナルとして積極的に利用されていることを示唆している。
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[Journal Article] Transcription elongation factor S-II is required for definitive hematopoiesis.2006
Author(s)
Ito T, Atimitsu N, Takeuchi M, Kawamura N, Nagata M, Saso K, Akimitsu N, Hamamoto H, Natori S, Miyajima A, Sekimizu K
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Journal Title
Mol Cell Biol 26
Pages: 3194-3203