2006 Fiscal Year Annual Research Report
脳形成に必須の分泌蛋白質リーリンの、翻訳後修飾とその分子メカニズム
Project/Area Number |
18790059
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
馬場 敦 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助手 (70405215)
|
Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 分泌蛋白質 / 脂質 / 翻訳後修飾 |
Research Abstract |
リーリンは巨大分泌蛋白質であり、大脳皮質の層構造が形成される過程に必須の分子である。リーリン遺伝子の欠損により、ヒトにおいて重度の精神遅滞を伴う滑脳症を呈する。成体脳においてもリーリンは発現しており、統合失調症や自閉症の発症と高い相関が有ることが知られている。本研究ではいくつかの予備的知見から、『脳内のリーリンは、C末端領域においてなんらかの修飾を受けている』との仮説に基づき、以下の研究をおこなった。マウス大脳皮質あるいは小脳より脳内リーリンを精製したところ、脳内在性リーリンは細胞膜と高い親和性をもつことが明らかとなった。この膜親和性は、(1)特定の膜蛋白質との結合を介するものではなく、(2)リーリン自身の脂質結合性によるものであることも示唆され、(3)大脳および小脳層構造形成のおこなわれる時期に脳内に存在していた。培養細胞にリーリンを発現させたところ、細胞画分のリーリンには脳内在性リーリンと同様に脂溶性の高いものが存在した。現在、どのような脂質がリーリンと結合しているかについて解析中である。一方、リーリンC末端配列は種を超えて保存されており、リーリンの機能に重要な役割を果たすことが示唆される。C末端配列が修飾を受けている可能性を想定し、八番目のリピート内C末端側に対するペプチド抗体(抗R8-pep抗体)を作成し、リーリン変異体に対する反応性を検討した。その結果、抗原蛋白質及びC末端が存在しない変異体を認識できる抗R8-pep抗体が、C末端配列を持つ野生型リーリンを認識できないとする事実を新たに見いだした。抗R8-pep抗体のエピトープを決定し抗体反応性の低下の原因を解析したところ、リーリンC末端配列は翻訳後修飾に依存しない特異な立体構造を形成していることが明らかとなった。
|
Research Products
(1 results)