2007 Fiscal Year Annual Research Report
脳形成に必須の分泌蛋白質リーリンの、翻訳後修飾とその分子メカニズム
Project/Area Number |
18790059
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
馬場 敦 Nagoya City University, 大学院・薬学研究科, 助教 (70405215)
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / リーリン / 分泌蛋白質 / 脂質 / 翻訳後修飾 |
Research Abstract |
リーリンは脳の層構造が形成される過程に必須の分泌蛋白質であり,ヒトでもリーリン遺伝子の欠損により重度の精神遅滞を伴う滑脳症を引き起こす。成体脳においてもリーリンは発現しており,統合失調症や自閉症の発症と高い相関が有る。従って,細胞外に分泌されたリーリンが「いつ,どのように」機能するか解析することはこれらの疾患の発症機序を解明するうえできわめて重要である。本研究では「リーリンC末端配列が何らかの修飾を受けている」との仮説に基づき,以下の研究をおこなった。リーリンが細胞外でどの程度まで拡散できるか知る目的で,脳内リーリンの膜親和性を生化学的に解析した。その結果,マウス胎仔の脳内リーリンは1.高い膜親和性を有し,2.脂溶性の高いものが存在することが明らかとなり,3.リーリン蛋白質への脂質結合により脂溶性を獲得することが示唆された。また,培養細胞にリーリンを発現させたところ,脂溶性の高いものが一部存在した。各種脂質修飾の阻害薬の適用によりリーリンの脂溶性が変動するか検討したところ,脂肪酸アシル化やイソプレニル化,GPI等の脂質修飾阻害薬では影響をうけなかった。従って,新たな形式の脂質修飾によりこれらの脂溶性獲得に至るものと考えられた。更に,脳内リーリンの細胞外における結合分子を知る目的で,野生型リーリン及びC末端領域欠失型リーリンを培養神経細胞に適用し,分布を調べたところ,C末端領域を持つ野生型リーリンはC末端領域欠失型リーリンに比べ,神経細胞膜に強く結合することが明らかとなった。この2種のリーリンは受容体への結合力に差はなく,膜表面への結合力はリーリンシグナルの活性化能と相関した。以上により,リーリンC末端配列が未知の共同受容体に結合することが示唆された。C末端配列における脂質修飾はリーリンの細胞外分布を制御し,シグナル伝達活性化を制御する可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)