2006 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血障害におけるプロスタグランジンE2合成酵素の役割
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18790063
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
松尾 由理 北里大学, 薬学部, 講師 (10306657)
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Keywords | プロスタグランジンE2 / プロスタグランジンE2合成酵素 / 虚血 / 脳梗塞 / 炎症 / 欠損マウス / 神経細胞死 / シクロオキシゲナーゼ |
Research Abstract |
本研究では、誘導型でプロスタグランジンE_2合成の末端酵素である、膜結合型プロスタグランジンE_2合成酵素(mPGES-1)の脳虚血障害における役割を、中大脳動脈閉塞-再灌流(MCAO)モデルを用いて解析した。まず始めに、ラットを用い、MCAOによるmPGES-1の発現変化をWestem blot法にて解析したところ、梗塞部位である大脳皮質において、再灌流24時間後にmPGES-1とCOX-2タンパク質の共誘導が認められたが、24時間後以降のそれらの発現の時間経過は異なった。また、Northem blot法による解析の結果、両酵素ともに転写促進を介することが明らかとなった。mPGES-1と各種脳細胞マーカータンパク質との免疫共染色より、mPGES-1は神経細胞、マイクログリア及び血管内皮細胞において誘導することが示唆された。次に、mPGES-1欠損マウスを用いて、脳虚障害における誘導mPGES-1の役割を解析した。mPGES-1欠損マウスにおいては、虚血による大脳皮質でのPGE_2産生が完全に消失しただけでなく、野生型マウスに比べ再灌流24時間後の梗塞体積や浮腫が顕著に抑制された。また、神経細胞のアポトーシスを検討するため、虚血後の脳切片をTUNEL染色、或いはcaspase-3の免疫染色を行ったところ、虚血による梗塞周辺領域の神経細胞死も、mPGES-1欠損マウスにおいては野生型に比べ改善していた。さらに、虚血による行動異常、運動量の低下も野生型マウスに比べ改善していた。本研究より、mPGES-1の誘導は脳虚血時のPGE_2産生に必須であり、脳虚血障害の増悪因子であることが示唆された。従って、mPGES-1は脳梗塞治療の有効なターゲットになり得るものと期待される。
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