2006 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の新たな供給源としての脈絡叢上衣細胞の機能解析
Project/Area Number |
18790143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
糸数 裕 京都大学, 医学研究科, 助手 (70402831)
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Keywords | 再生医学 / 再生医学 / 神経幹細胞 / 細胞分化 / 幹細胞ニッチ / 脈絡叢 / 上衣細胞 / FACS |
Research Abstract |
脈絡叢は上衣細胞と結合組織が一体となった組織で、さらに脳室上衣細胞と連続していることから、これまでの研究では脈絡叢上衣細胞以外の細胞の影響を否定できなかった。そこで脈絡叢上衣細胞を特異的に認識する抗体を作成した。作成した3E6抗体は特異性が非常に強く、脳室上衣細胞など脈絡叢上衣細胞以外は標識されない。電子顕微鏡の観察から、脈絡叢上衣細胞の微絨毛を特異的に認識していることが分かった。この3E6抗体によりFACSで単離した細胞は増殖し、さらに神経系の3系統の細胞に分化することが明らかとなった。つまり一部の脈絡叢上衣細胞には自己複製能と多分化能があり神経幹細胞の性質を有していることを発見した。生体ラットの脈絡叢の中で、神経分化に関するマーカーであるEGF-RおよびMusashi-1を発現している細胞が存在していることが明らかとなった。 BrdUの取り込み実験では、増殖因子の脳室内投与により成体ラットの脈絡叢上衣細胞が、生体内で分裂能力を持っていることが明らかとなった。さらに脈絡叢上衣細胞の神経幹細胞としての基礎的解析を進めるべく脳虚血ラットを用いて脈絡叢上衣細胞の解析を行った。3E6抗体による細胞生物学的解析および免疫組織化学的解析から、脳虚血後に増殖した脈絡叢が脈絡叢上衣細胞であることならびに、神経幹細胞に関連するマーカーである(Musashil、EGFR、nestin、Notch1)の発現している細胞が正常動物と比較して有為に増加していることが明らかとなった。増殖した脈絡叢上衣細胞では、正常と比較してsphereの形成能力を有する細胞数が上昇していることを確認した。これは、脈絡叢上衣細胞が中枢神経損傷に際して組織の保護・再生に深く関わっていることを示唆する重要な事実で、今後の研究の進展が期待される。
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