2007 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の新たな供給源としての脈絡叢上衣細胞の機能解析
Project/Area Number |
18790143
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
糸数 裕 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (70402831)
|
Keywords | 脈絡叢上衣細胞 / 神経幹 / 前駆細胞 / 自己複製能 / 分化能 / モノクローナル抗体 |
Research Abstract |
脳室内に存在する脈絡叢は、脳脊髄液の産生部位として機能し、脈絡叢上衣細胞(CPEC: Choroid Plexus Ependymal Cells)がその中心的役割を果たしている。CPECは、脳室上衣細胞と連続しており、その発生は両者とも初期神経管の最内層であることから、特殊な上衣細胞であると考える事ができる。そこで本研究では、CPECが神経前駆細胞の性質を有するか否か検索した。 まず、CPEC特異的3E6抗体を作成し、FACSによりCPECを単離した。CPECは増殖因子を含む培地で培養すると、細胞塊を形成し、分化誘導により、神経およびグリア細胞への分化が認められた。 免疫組織化学より、一部のCPECが、神経前駆細胞に発現している分子(EGF-RおよびMusashi-1)を発現していることが認められた。成体の神経前駆細胞は相対的に静止状態であると考えられており、増殖因子の注入によりそれらの増殖性を刺激することが知られていることから、脳室内に増殖因子を注入したところ、一部のCPECがBrdUを取り込んでいることが検出された。また、脳虚血ラットを用いた実験では、脳損傷後にCPECが増殖し、増殖したCPECには神経前駆細胞が含まれていることが明らかとなってきた。脊髄中心管上衣細胞や脳室上衣細胞の一部が損傷後に増殖することが知られているが、CPECも損傷刺激により増殖し中枢神経系の再生および保護に関して、何らかの役割を果たしているのかもしれない。脈絡叢の神経保護作用に関して、脳虚血ラットにCPECを移植することにより、梗塞巣を減少させうることが明らかとなってきた。 本研究により、CPECは単に脳脊髄液の産生場所であるのみならず、一部のCPECは神経前駆細胞の性質を有し、虚血や損傷などの障害を受けて神経細胞やグリア細胞を作り出すことが明らかとなってきた。
|