2006 Fiscal Year Annual Research Report
腸管神経と腎臓の発生過程の動的観察とGDNFシグナルの役割の解明
Project/Area Number |
18790154
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上坂 敏弘 独立行政法人理化学研究所, 神経分化・再生研究チーム, 研究員 (90304451)
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Keywords | GDNF / Hischsprung病 / 細胞死 / 神経栄養因子 |
Research Abstract |
胚形成期における腸管神経系において、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)とその受容体であるGFRα1の発現を調べたところ、腸管神経堤由来幹細胞が腸管全体に移行した後の時期(胎生15.5日)において、後腸に限定した発現パターンが認められた。そこで、胎生15.5日にGFRα1をノックアウトしたマウスを解析したところ、大腸の神経節が消失していた。GFRα1欠損後、GFP陽性の神経細胞の消失を経時的に解析したところ、GFRα1不活性化後24時間で消失が認められるようになり、36時間以内にほぼ完全に消失することが明らかになった。その過程において、TUNEL陽性細胞はわずかしか認められず、活性型のカスペース-3および7はほとんど認められなかったことから、従来のアポトーシスによる細胞死ではない可能性が示唆された。そこで腸管神経細胞を単離し、初代培養条件化で、GDNF除去による細胞死がカスペースおよびBax依存性かどうか検討したところ、カスペース阻害剤存在下でもBaxをノックアウトした状態でもGDNF除去による細胞死を抑えることはできなかったことから、カスペース非依存性の細胞死であることが示された。さらにノックアウトマウスの腸管神経を透過型電子顕微鏡で観察したところ、クロマチンのコンパクションや典型的なネクローシスは認められず、特徴的な異常として核の歪な収縮が多くの細胞で認められた。 後腸における神経節の欠損はHirschsprung病の症状と酷似していること、GDNFおよびそのレセプターRETは原因遺伝子であることから、この細胞死が発症メカニズムに関与している可能性は十分考えられる。今後は、この細胞死のメカニズムの解明とHirschsprung病マウスモデルの改良とHirschsprung病の発症メカニズムの解明に重点を置いて研究を進めていく予定である。
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