2006 Fiscal Year Annual Research Report
異種細胞の遺伝子発現同時検出可能な共培養系による生体時計同調機構解析
Project/Area Number |
18790175
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
中島 芳浩 独立行政法人産業技術総合研究所, セルエンジニアリング研究部門, 主任研究員 (10291080)
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Keywords | 生体リズム / 発光レポーター / 共培養 / 細胞間相互作用 |
Research Abstract |
各々の組織・細胞の時計遺伝子発現を非侵襲的に同時にモニター可能な新規リアルタイム発光システムを構築し、位相や周期の異なる異種の細胞を共培養した際に生じる発現変動の変化を追跡する。これにより、概日リズム形成における細胞間同調の機構解析を試みる。本年度の研究実績は以下のとおりである。 1.株化培養細胞における細胞間同調の検討 モデル株化細胞であるラット繊維芽細胞Rat-1において、細胞間のリズムの同調の有無を解析した。時計遺伝子Bmal1プロモーターに鉄道虫由来の赤色と、イリオモテボタル由来の緑色ルシフェラーゼを連結した2種類のベクターを作成し、これらを導入したRat-1細胞の安定株を樹立した(以下それぞれBmal1-RED、Bmal1-GR)。これらの細胞を共培養あるいは単独培養し、2色のルシフェラーゼの発光を同時にモニターすることで発光リズムのリズムの周期、位相、振幅を比較した。2種の細胞を共培養した場合、単独で培養した場合と比較して、Bmal1-REDの位相は約1.2時間有意に後退し周期が延長したが、Bmal1-GRの位相と周期、双方の振幅に変化は見られなかった。以上よりRat-1細胞の概日リズムは同調せず、内在的なリズムに従って振動を続けることが示唆された。 2.抹消組織と株化培養細胞における組織-細胞間同調の検討 Bmal1プロモーターにクリックビートル由来緑色ルシフェラーゼを連結したベクターを作製し、これを導入したトランスジェニックマウスを構築した。このマウスから単離した組織は、明瞭な発光の概日リズムが観察され、本研究の目的に十分使用可能なラインであることが明らかとなった。続いて。トランスジェニックマウスから調製した抹消組織を、前述のBmal1-RED/Rat1細胞と共培養し、両者のリズムを同時に測定し、同調の有無について検討した。その結果、肺や肝臓と共培養した場合、Rat1細胞のリズムに変化は認められず、両者において同調機構はないことが示された。一方、単離した副腎とRat1細胞を共培養すると、副腎のリズムに変化はないが、Rat1のリズムは大きく影響されることが明らかとなり、副腎との同調が認められた。この結果、副腎は他の細胞・組織を同調させる作用を持ち、分泌される、ある種のホルモンが同調に関与していることが示唆された。
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