2006 Fiscal Year Annual Research Report
CD44細胞外ドメイン切断および細胞外マトリクス代謝阻害による癌細胞運動抑制
Project/Area Number |
18790225
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
永野 修 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 研究員 (30404346)
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Keywords | 脳腫瘍 / ヒアルロン酸 / CD44 / HAS / ADAM17 / ERM / 網膜色素上皮 / EMT |
Research Abstract |
悪性グリオーマやメラノーマなど、悪性度の高い多くの癌細胞においてその細胞周囲に形成されるヒアルロン酸を主体とする細胞周囲マトリクスが癌細胞の浸潤に強く関わっていることが知られている。また、これらの細胞ではヒアルロン酸をリガンドとすろ接着分子であるCD44の切断を介した接着と解除のターンオーバーが促進しており、CD44の切断がこれらの癌細胞の運動能を規定する一因子であると考えられる。本研究は、ADAM17がいかなる制御を受けてCD44の切断を行うかを明らかにし、ヒアルロン酸合成酵素(HAS)の活性化やADAM17を介したCD44のターンオーバーによって制御され、癌細胞自身が形成する細胞外マトリクスのリモデリング機構がどのように癌細胞の運動を制御しているかを明らかにするとともに、更にRNAiを用いたこれらの酵素の特異的阻害が癌の浸潤転移抑制治療となる可能性について検討を行うことを目的として行った。初年度の主な成果を以下に示す 【1】ADAM17によって制御される、ヒアルロン酸マトリクスと接着分子CD44の接着と解除の回転(turnover)がグリオーマ細胞の浸潤能を規定する重要な要素であることを見出したので、浸潤性の高い腫瘍においてそのturnoverを亢進させる分子機構を調べた。その結果、CD44のADAM17切断を介した切断にはERMを介したアクチン細胞骨格へのリンクおよびHAS3の活性化に伴うヒアルロン酸の新規合成が関わっていることを見出し、それらの阻害によって細胞の浸潤をきわめて効果的に抑制することに成功した。 【2】網膜色素上皮細胞を炎症性サイトカインTNF-αで刺激すると上皮-間葉変換(epithelial-mesenchymal transition : EMT)が生じることを見出している。この際、CD44の細胞骨格への連結分子であるERMタンパク質のリン酸化やHAS2およびHAS3のmRNA発現が上昇すること、またCD44のターンオーバーとそれに伴う細胞運動性が亢進することがTNF-αで誘導される網膜色素上皮細胞のEMTに重要であることが明らかになった。そこで来年度は網膜色素上皮細胞のEMTにおけるCD44、HAS、ERMの役割と活性化機構について明らかにし、網膜の変性疾患に対する治療のターゲット分子になりうるかについて検討したいと考えている。
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