2006 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌の悪性化機構-新規アクチン結合分子CAP1の機能解析
Project/Area Number |
18790279
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山崎 剣 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30298129)
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Keywords | 膵癌 / CAP1 / 細胞運動 / 免疫組織染色 / RNA干渉法 / 網羅的遺伝子発現解析 |
Research Abstract |
膵臓がんは、日本において、がんによる死亡率の中では5番目に高く、悪性度の高い難治がんとして認識されている。膵管癌(以下膵癌と略す)は膵管由来の上皮性悪性腫瘍で、膵臓がんのほとんどを占めている。膵癌の悪性度を高くしている要因のひとつとして、膵癌細胞の高運動能(転移・浸潤能)があげられる。本研究では、マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析の結果、膵癌全般で発現が亢進している遺伝子のひとつとしてCAP1(adenylate cyclase-associated protein 1)に着目し、病理学的および分子生物学的解析を行った。 免疫組織染色により膵癌臨床検体でのCAP1発現を見たところ、低分化ながん細胞ほど強い陽性を示すなど発現量に差はあるものの、約60症例のほとんどでCAP1陽性を認めた。また膵癌由来培養細胞株全て(8株)でCAP1は発現しており、それらを用いた蛍光免疫細胞染色により、核周辺の細胞質および膜状仮足先端部にCAP1が局在していることが示された。膜状仮足は細胞が移動する方向に伸展され、アクチン重合が盛んに行われている領域であるが、CAP1はここでアクチンと共局在していることが確認され、膜状仮足形成へのCAP1の関与が示唆された。 RNA干渉法(RNAi, RNA interference)により膵癌由来細胞株のCAP1発現を阻害したところ、膜状仮足の形成(特に血清刺激に対する応答として)が減じられた。またマトリゲルを用いた浸潤能測定の結果、CAP1に対するRNAiにより膵癌細胞の浸潤能が低下することが示された。これらのことから、膵癌細胞において、アクチン重合による膜状仮足の伸展に伴う細胞運動にCAP1が関与していることが示唆された。
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