2006 Fiscal Year Annual Research Report
レトロウイルス挿入変異を用いた大腸上皮の発がん機構の解明
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18790287
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
田中 美和 (財)癌研究会, 癌研究所発がん研究部, 研究員 (70345883)
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Keywords | 大腸がん / レトロウイルス挿入変異 / APC遺伝子 / 協調遺伝子 / 発がん機構 |
Research Abstract |
大腸がんの発生はAPC遺伝子の変異が深く関与しているが、この他に様々な遺伝子変異の蓄積が必要である。本研究は、マウスの造血系発がんの研究で用いられている「レトロウイルス挿入変異システム」を大腸上皮細胞に応用し、APC遺伝子の変異以降の過程に関与する分子機構を明らかにする事である。マウスの大腸上皮YAMC細胞(Apc+/+)とMinマウス由来のIMCE細胞(Apc^<min>/+)にレトロウイルスを導入し、大腸発がんに関連する新たな遺伝子の同定を試みた。両細胞共、軟寒天培地中では増殖出来ないがレトロウイルスを導入するとIMCE細胞でのみ足場非依存的な増殖を示すコロニーが形成された。形質転換後もApc正常アレルは保存されていたので、形質転換の原因となる遺伝子はApcヘテロ変異と協調作用を示す重要な遺伝子であると考えた。そこで、形質転換したクローン(101個)のDNAをinverse PCR, splinkerette PCR法により解析し、154箇所のレトロウイルス挿入部位を確認した。この中からウイルスの共通挿入部位近傍に存在する遺伝子のRNAレベルを調べたところ、Apcヘテロ変異と協調して働く遺伝子の候補としてAhnak, AK053178を同定した。Ahnakがコードする巨大なタンパクは細胞間接着をサポートしており、大腸がん以外のがん関連遺伝子としての報告がある。またAK053178は、Dynein, axonemal, heavy chain 3に含まれており、microtuble上でdynein moter complexを形成しているという報告がある。現在、これら遺伝子の機能解析を進めている。今後は、大腸発がんにおける新たな関連遺伝子の候補としてAPC遺伝子との協調作用を明らかにし、分子標的治療への応用の道を探りたい。
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