2007 Fiscal Year Annual Research Report
肺サーファクタントを基にした新人工ワクチンアジュバント:感染とアレルギー治療
Project/Area Number |
18790323
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
水野 大 The University of Tokushima, 病患酵素学研究センター, 科学技術振興教員 (70380061)
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Keywords | 経鼻ワクチン / インフルエンザ / ドラッグデリバリー |
Research Abstract |
肺サーファクタント免疫増強作用の必須成分である膜貫通型肺サーファクタントタンパクの増強効果に対する有効領域の探索を行った。膜貫通型タンパクC末端の膜貫通αヘリックス領域を切り詰めた誘導体を作成、サーファクタント脂質成分組成を模した混合脂質にこれを混合した切り詰め型人工サーファクタント(切詰型素材)を作成した。この切詰型素材をインフルエンザワクチンと混合、マウスに経鼻接種を行った。二次免疫2週間後のマウス気道粘膜における抗インフルエンザIgAの誘導を指標として免疫増強作用の評価を行った。切詰型素材の免疫増強作用は、天然肺サーファクタントと同等の効果を持ち、膜貫通型タンパクを構成成分に含む「完全人工ヒト型肺サーファクタント(完全型素材)」に比べて有意に低くなることが明らかとなった。 さらに我々は、天然膜貫通型タンパクは脂質膜外に露出するN末端領域がパルミトイル化され、このタンパクと脂質膜との結びつきを助けるアンカーとなっているという知見を基に、上記C末端切り詰め型タンパクのN末端をパルミトイル化した誘導体を作成、混合脂質と混合した「パルミトイル化素材」を作成、同様にマウスへの経鼻ワクチン接種による免疫増強作用の比較検討を行った。パルミトイル化素材は完全型素材と同等レベルの免疫増強作用を示し、膜貫通型肺サーファクタントタンパクの膜貫通αヘリックス領域の切り詰めによる免疫増強作用の消失は、タンパクN末端のパルミトイル化により回復することが示された。 これらの結果から、膜貫通型肺サーファクタントタンパクのN末端脂質膜外領域は肺サーファクタントの免疫増強作用に寄与しており、その効果を発揮するためには脂質膜に膜貫通型肺サーファクタントタンパクを結合させることが必要であることが示唆された。
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