2006 Fiscal Year Annual Research Report
スフィンゴシン1リン酸を介した粘膜システム制御機構の解明と免疫療法への応用
Project/Area Number |
18790333
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國澤 純 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80376615)
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Keywords | 粘膜免疫 / 脂質メディエーター / スフィンゴシン1リン酸 / 分泌型IgA / リンパ球遊走 |
Research Abstract |
生体の免疫反応を担うリンパ球の動態・分布はケモカインや接着分子の発現によって制御されていることが知られているが、近年、スフィンゴシン1リン酸(S1P)と呼ばれる脂質メディエーターが、ケモカインなどと同様、リンパ球の遊走、特に二次リンパ節や胸腺からの移出の過程において重要な制御分子として機能していることが明らかとなってきた。一方、呼吸器や消化器をはじめとする粘膜組織には、粘膜免疫システムと呼ばれる免疫システムが存在する。外界と常時接している粘膜免疫システムには、生体の恒常性維持を担うための特殊な細胞集団が存在するが、それら粘膜免疫システムに特有の免疫担当細胞の遊走制御におけるS1Pの役割については、全く明らかとなっていない。本研究において、研究代表者はS1P受容体の阻害剤として機能することが知られているFTY720を用いることで、腸管管腔に分泌型IgA抗体を産生させるB細胞の一つとして知られている腹腔B細胞の腸管への遊走にS1Pが関与していることを見いだした。すなわち、FTY720をマウスに投与することで、腹腔内B細胞が消失し、腹腔の所属リンパ節であるParathymic lymphnodeに集積することが確認された。この効果は、腹腔B細胞の腸管への遊走抑制へとつながり、その結果、腸管内B細胞数ならびに腸管管腔内IgA量が著しく減少した。またFTY720は、Streptococcal pneumniaeの死菌体を免疫した際に得られる菌体特異的分泌型IgA産生も減弱させた。これらの結果は、S1Pが腸管B細胞の遊走制御に関わっていると同時に、その作用が粘膜型IgAの産生、ならびに感染防御において重要な役割を担っていることを示すものと考えられる。 さらに研究代表者は、現在、別の粘膜免疫システムに特有のリンパ球である上皮細胞間リンパ球の遊走や食物アレルギーの発症にS1Pが関わっていることを示唆する結果を得ている(改訂投稿中)。今後これらの研究をさらに進展させることで、S1Pを中心とした粘膜免疫制御システムの解明が進むものと期待される。
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Research Products
(6 results)