2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18790345
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山崎 哲 独立行政法人理化学研究所, サイトカイン制御研究グループ, 研究員 (30392161)
|
Keywords | 肥満細胞 / 炎症性サイトカイン / 亜鉛 / 細胞内情報伝達 / アレルギー / 脱リン酸化酵素 |
Research Abstract |
本研究では、アレルギー反応の鍵となる肥満細胞における炎症性サイトカインの産生機構についての新たな知見を得る目的で、肥満細胞内での遊離亜鉛に着眼した。 われわれは、亜鉛蛍光指示薬を用いて蛍光顕微鏡で経時的観察を行い、抗原刺激依存的に肥満細胞内の遊離亜鉛濃度が上昇する事を明らかにした。この刺激依存的な遊離亜鉛の上昇が、抗原受容体の下流のSykおよびPLCγ2依存的なシグナル伝達で制御されていること、さらに細胞内カルシウム濃度の上昇とRas-MAPKシグナル伝達経路の活性化依存的に起こる事を明らかにした。また、細胞内小器官特異的な蛍光試薬を使用して観察を行った結果、核周辺の小胞体近傍が遊離亜鉛の発生源であることを確認した。この刺激依存的な遊離亜鉛の上昇が肥満細胞の炎症性サイトカインであるIL-6やTNF-αの産生に関与しているかどうかを確かめるために、薬剤を用いて人為的に遊離亜鉛の上昇を再現させた。その結果、細胞内亜鉛の上昇により抗原刺激依存的なサイトカインの産生が亢進し、反対に亜鉛のキレート剤では抑制されることが明らかになった。これらのサイトカインの転写活性化には、主要な転写因子であるNF-κBではなくMAPKが関与していることが明らかになった。さらに、細胞内遊離亜鉛濃度の上昇との活性には負の相関がある事が示され、このことから遊離亜鉛が脱リン酸化を抑制することでMAPK活性化を持続することに関与している事が示唆された。 以上の結果から、本研究では肥満細胞による炎症性サイトカイン産生において細胞内遊離亜鉛が役割を果たしているという新たな知見を得る事ができた。今後この知見が肥満細胞以外の免疫細胞においても明らかにされることが期待できる。
|