2008 Fiscal Year Annual Research Report
セレン化合物による乳がん細胞増殖抑制メカニズムの解明
Project/Area Number |
18790385
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
奥野 智史 Setsunan University, 薬学部, 助教 (30288972)
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Keywords | 乳がん / 増殖抑制 / 17β-エストラジオール / エストロゲン受容体 / セレン / メチルセレニン酸 / グルタチオン |
Research Abstract |
昨年度までの検討で、17[○!R]-エストラジオール(E2)存在下においてエストロゲン受容体(ER)をもつヒト乳管癌由来T47D細胞の増殖が有意に促進され、この増殖促進は亜セレン酸ナトリウム、セレノメチオニンおよびメチルセレニン酸(MSA)によって効果的に抑制することを報告した。しかし、今回の検討でERをもたないヒト乳癌由来MDA-MB-231細胞では、セレン化合物による有意な増殖抑制作用は観察されなかった。MSAによるT47D細胞の増殖抑制には、MSAからチオレドキシンレダクターゼ1(TR1)への代謝が関与する可能性があることから、E2存在下でMSAを曝露したT47D細胞におけるセレンの存在形態に関する検討を試みた。しかしながら、T47D細胞内に存在するセレン量が少なく、代謝中間物を同定することはできなかった。ところで、T47D細胞内の還元型グルタチオン(GSH)量は2.6±0.2nmol/mg proteinであり、このGSHによって細胞内に取り込まれたMSAが代謝されることが十分に考えられた。そこで、GSHの枯渇剤であるブチオニンスルホキシドをあらかじめ処理したT47D細胞にE2およびMSAを曝露したとき、MSAによる細胞増殖抑制作用はやや減弱した。一方、N-アセチルシステインを前処理して細胞内GSH量を増加させたT47D細胞では、E2存在下のMSAによる細胞増殖抑制作用は有意に抑制された。これらのことから、MSAは細胞内のGSHによってTR1に代謝されて、チオレドキシン1(Trx1)/TR1系を介してE2による細胞内活性酸素の生成を抑制することによって細胞増殖を抑制することが示唆された。
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