2006 Fiscal Year Annual Research Report
熱中症の法医学的診断法の開発およびその病態生理に関する研究
Project/Area Number |
18790421
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
井上 裕匡 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (50363338)
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Keywords | 熱中症 / 肺脂肪塞栓 / 高体温 / 法医解剖 / 剖検診断 / Heat shock ptotein |
Research Abstract |
法医解剖事例中、高温環境下で死した事例(死因:熱中症、急性心能不全、虚血性心疾患)とそれ以外の環境下で死亡した事例(死因または死亡の種類:病死、損傷死、窒息、焼死、覚醒剤中毒死)について、肺脂肪塞栓の有無、あればその程度を比較した。その結果、高温環境下で死亡した症例では、そのほとんどに肺脂肪塞栓症が認められた。一方で、従来から言われている骨折や火傷、糖尿病状態だけでなく、動脈硬化に起因した症例においても肺脂肪塞栓が認められることがわかつたが、急性心機能不全と診断された事例については肺脂肪塞栓を認めなかった。これらの結果から、肺脂肪塞栓は基礎疾患や死亡直前の状態を反映することが明6かとなつた。すなわち、肺脂肪塞栓の検索は死者の死への機序解明に有効である可能性があり、中でも熱中症の剖検診断における有効な方法であることを示した(現在、論文投稿中)。 一方、肺におけるheat shock protein(HSP)は、成人では高温環境下での死亡事例以外でも強く発現していることがわかった。特に死因との関連も認められず、HSPの発現による熱曝露の証明は困難であり、その評価はその他の蛋白の発現と併せて考えるべきである(論文作成準備中)。 病態生理学的検索では、肺脂肪塞栓の有無が熱中症における肺病変(急性呼吸促迫症候群)の発症に関与している可能性を検討するために、実験的肺脂肪塞栓ラットを作成した。病理組織学的に脂肪の血管内流入量が推定でき、今後の脂肪塞栓症に関連した実験において利用可能である(論文作成中)。この脂肪塞栓モデルラットを用いて、高温曝露における肺脂肪塞栓と肺病変の関連を検討しているところである。
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