2008 Fiscal Year Annual Research Report
更年期障害に用いられる漢方薬がエストロゲン減少に起因する脂質代謝異常に及ぼす影響
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18790434
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
坂梨 まゆ子 University of the Ryukyus, 医学部, 助教 (80363662)
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Keywords | 薬理学 / 循環器・高血圧 / 東洋医学 |
Research Abstract |
卵巣摘出手術(OVX群)あるいは偽手術(Sham群)を施した8週齢のWistar系雌性ラットに対して、三黄潟心湯エキス懸濁液150mg/mLまたは水を強制経口投与し、4週間後に採血を行い、心臓および胸部大動脈を摘出して実験に用いた。 Langendorff摘出灌流心臓の虚血再灌流(30分虚血+60分間再灌流)傷害については、OVX群、Sham群ともに、三黄潟心湯投与で左室機能障害の有意な改善作用が認められ、再灌流後の左室心筋中のATP量は有意に高値を示した。再灌流後の左室心筋中のマロンジアルデヒド量は、OVX群、Sham群ともた、三黄潟心湯投与で有意に低値を示し、三黄潟心湯による脂質過酸化の抑制が示唆された。これらの結果から、三黄潟心湯は抗酸化作用により虚血再灌流傷害の改善に寄与する可能性が示唆された。現在、三黄潟心湯の抗酸化作用の機序を解明するために、再灌流後の左室心筋中のスーパーオキサイドジスムターゼ量の測定を行っている。 一方、血液検査の結果、中性脂肪はOVX群のみで、総コレステロールとLDLコレステロールは、OVX群、Sham群ともに、三黄潟心湯投与で有意に低値を示し、三黄潟心湯による血中脂質関連物質の低下作用が示唆された。また、血漿中の窒素酸化物含有量(NO2+NO3)は、OVX群、Sham群ともに、三黄潟心湯投与で有意に高値を示し、三黄潟心湯の窒素酸化物産生促進作用が示唆された。現在、血管内皮細胞の状態を評価するために、摘出大動脈におけるNO合成酵素のタンパク量の解析を引き続き行っている。 以上の結果から、三黄潟心湯は血中の脂質関連物質の低下作用や、窒素酸化物量の産生増加作用により、動脈硬化や心筋梗塞のような冠動脈性疾患の発症を抑制する可能性が推測された。また、心筋梗塞のような虚血性心疾患が発生した場合でも、三黄潟心湯には、虚血再灌流心機能障害の程度を抗酸化作用により軽減する可能性が併せて推測された。
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