2006 Fiscal Year Annual Research Report
受容体型チロシンキナーゼを標的としたEGCG大腸発癌抑制の研究
Project/Area Number |
18790457
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
清水 雅仁 岐阜大学, 医学部附属病院, 助手 (90402198)
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Keywords | EGCG / RTM / 大腸癌 / 発癌予防 |
Research Abstract |
本研究は、緑茶ポリフェノールであるEGCGのEGFRファミリーを含めた様々な受容体型チロシンキナーゼ(RTK)とそれらの下流に位置するシグナル伝達経路に対する効果について、in vitroおよび動物大腸発癌モデル(化学発癌モデル、大腸癌細胞担癌モデル)を用いて検討し、日常生活で恒常的かつ容易に摂取可能であるEGCGやその他の緑茶抽出物による大腸癌予防のメカニズムを「分子標的療法」的概念に基づいて考察し、今後の有効な大腸癌予防法を確立することを目的としている。我々は、EGCGが大腸癌細胞株(SW837およびHT29)において腫瘍細胞の増殖に重要なRTKであるEGFR、HER2、HER3、およびIGF-1Rのリン酸化(活性化)と、それらの下流に位置する細胞内シグナル伝達分子の活性化を阻害し、細胞増殖を抑制することを確認した。特にIGF/IGF-1Raxisにおいて、EGCGはリガンドであるIGFの産生も抑制することが認められた。次に、DSS/AOM投与による腸炎由来大腸発癌モデルにEGCGを飲水投与したところ有意な発癌抑制効果が認められたが、EGCGはRTKの阻害作用のみならず、COX-2の発現抑制やTNF-・を始めとする各種炎症性サイトカインの発現を抑制するという抗炎症効果も示した。SW837大腸癌細胞株を移植した大腸癌細胞担癌モデルにおいても、EGCGは腫瘍の増大を抑制することが確認されたが、これらの研究結果はEGCGが生理的投与量で大腸癌の発生・増殖を抑制することを示唆した。我々は臨床試験にて、緑茶抽出ポリフェノールによる大腸ポリープ再発抑制効果を確認したが(未発表)、今回の基礎研究の知見は、ヒトにおける緑茶ポリフェノールによる大腸発癌予防に関して、分子生物学的立場から「Evidence」と「Biomarker」を臨床の場に提示していくことを可能にするものと考えられた。
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