2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18790483
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
吉田 隆文 久留米大学, 医学部, 助手 (30368899)
|
Keywords | サイトカイン / シグナル伝達 / 肝炎 / 肝癌 / SOCS-1 / Spred |
Research Abstract |
本邦における癌による死因の中で肝癌は高い割合を占めており、今後も増加していくことが確実視されている。肝癌の多くはC型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされる慢性肝炎、肝硬変といった肝臓における慢性の炎症を母地として発生することがわかっており、その病態解明が肝癌の制圧につながるものと考えられる。 サイトカインによる細胞内へのシグナル伝達は、主にJAK-STAT系とRas-MAPキナーゼ系の二つの経路によって行われる。これまでに多くの炎症性疾患や腫瘍性疾患において、このJAK-STAT系やRas-MAPキナーゼ系の異常が示されており、これらのシグナル伝達系を標的とした治療法の開発が進められている。我々は、JAK-STAT系サイトカインシグナルの重要な抑制因子であるSOCS(Suppressor of cytokine signaling)ファミリーとRas-MAPキナーゼ系の抑制因子であるSpred(Sprouty-related protein with Ena/vasodilator-stimulated phosphoprotein homology-1(ENH) domain)ファミリーの存在を証明した。また、これらの背景をもとに我々は慢性肝炎、肝癌におけるサイトカインシグナル伝達機構の関連解明を進め、C型肝炎ウイルス蛋白がJAK-STAT系シグナル伝達を活性化することや、メチル化によるSOCS-1遺伝子の発現低下が肝硬変、肝癌への進行を促進することを証明してきた(Yoshida T, et al J Exp Med. 2002. Yoshida T, et al J Exp Med. 2004). 肝癌は分化度の高い高分化型肝癌から分化度の低い肝癌へと脱分化していくことによって細胞学的悪性度を増し、各種治療に対し抵抗性となる。我々は肝癌の悪性度に関しての研究を進めていく中で、Ras-MAPキナーゼ系の抑制因子Spredの発現低下が肝癌の悪性化に非常に重要な役割を担っていることを見いだした。(Yoshida T, et al Oncogene. 2006).我々のこれらの研究成果から、JAK-STAT系とRas-MAPキナーゼ系のシグナル伝達系とこれらの抑制因子SOCS-1、Spredが肝硬変、肝癌においてきわめて重要な役割を担っていることが示唆され、治療法の開発を見据えた研究を推進中である。
|
Research Products
(6 results)