2006 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性肺疾患における抗菌ペプチドの病態生理学的意義に関する細胞および個体での検討
Project/Area Number |
18790534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 泰弘 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (60376473)
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Keywords | ディフェンシン / 筋ジストロフィー / 炎症 / NF-κB / neural cell adhesion molecule / アポトーシス / 老化 |
Research Abstract |
ディフェンシンは、保存されたシステイン配列をもつ抗菌ペプチドの一群である。これらは、肺や皮膚などの様々な組織で産生されており、また、好中球顆粒中にも多量に存在する。ディフェンシンは、感染防御上の重要なエフェクター因子であるが、同時に、炎症の制御因子としての機能も有し、また、高濃度では、哺乳類細胞に対して細胞毒性を示す。我々は、ディフェンシンの発現異常がもたらす病態生理学的意義を調べるために、CAGプロモーター下でマウスβ-ディフェンシン-6を過剰発現する遺伝子改変マウスを作製した。我々は、2系統の遺伝子改変発現マウスを得た。一方の系統では、著しい低体重、亀背、筋力低下、寿命の短縮が認められた。病理学的には、骨格筋中に変性線維が散在し、筋線維の多くは中心核線維に置換されていた。さらに、骨密度の有意な低下も認められた。もう一方の系統では、ディフェンシンの発現量が比較的少なく、著明な筋力低下は認められなかったが、生後1年の骨格筋には有意に多くの中心核線維が確認された。さらに、いずれの系統の骨格筋においても、多くの筋線維の細胞質内にneural cell adhesion molecule、IκBαの蓄積が観察された。その一部では、活性型カスパーゼ3の存在も確認され、アポトーシスの進行が示された。ディフェンシン過剰発現マウスの表現型は、筋の変性疾患に類似するとともに、寿命の短縮、低体重、骨密度低下など、加齢現象の促進を示唆する所見でもあり興味深い。その機序には、NF-κB系の関与が示唆された。我々の研究成果は、抗菌ペプチドによる組織障害を個体レベルで明らかにした初めての研究である。ディフェンシンが、感染防御に寄与する一方で、その発現制御の異常が、筋、肺を含む全身の炎症性疾患の病態形成や老化促進に寄与する可能性を示唆している。
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