2007 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性肺疾患における抗菌ペプチドの病態生理学的意義に関する細胞および個体での検討
Project/Area Number |
18790534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 泰弘 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (60376473)
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Keywords | 免疫学 / 応用動物 / 炎症 |
Research Abstract |
私は、ヒトの代表的な抗菌ペプチドであるディフェンシンが、感染防御に寄与する一方で、その発現量によっては、老化の促進、カヘキシアの発症に寄与することを検討してきた。我々は、マウスβ-ディフェンシンー6をCAGプロモーター下で過剰発現するマウスを作製し解析した。当該マウスは、寿命の短縮、低体重、骨格筋の変性の所見を呈した。筋線維の膜透過性が亢進し、血清クレアチンキナーゼは上昇しており、筋ジストロフィー症に類似する所見であった。これらの筋変性には、NF-kB系の関与が示唆された。同時に、このディフェンシン過剰発現マウスの表現型は、老化促進モデルにも類似した所見であった。当該マウスの脂肪量は明らかに少なく、著しいるいそうとともに死に至るようであった。また、骨密度も有意に低値であった。さらに、老化との関連の深い酸化ストレスのマーカーとして尿中8-OHdG を測定したところ、尿中8-OHdG/クレアチニン比の有意な上昇も認められた。しかし、当該マウスの肺については、気腔の拡大などの形態上の有意な変化は確認されなかった。一方、これらの表現型から示唆されるβ-ディフェンシンの細胞傷害性につて、肺腺癌由来のA549細胞を用いて検討した。ヒトβ-ディフェンシンー3は、投与後30分の短時間に、濃度依存性の細胞膜傷害を惹起した。FITCによりラベルしたβ-ディフェンシンの動態を観察すると、細胞膜傷害の後、ディフェンシンは細胞内、核内に移行する所見が得られた。より長時間の刺激の後には、DNAの損傷も惹起された。他のヒトβ-ディフェンシンやHNP-1と比べて、ヒトβ-ディフェンシンー3およびそのマウスホモローグの細胞傷害性は顕著に強く、なんらかの特異的機能の存在も示唆するものであった。興味深いことに、この細胞傷害性は、P2受容体の拮抗薬であるスラミンやPPADSによりほぼ完全に阻害された。
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