2008 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性肺疾患における抗菌ペプチドの病態生理学的意義に関する細胞および個体での検討
Project/Area Number |
18790534
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 泰弘 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (60376473)
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Keywords | ディフェンシン / 老人肺 / 肺気腫 / エラスターゼ / 抗腫瘍作用 |
Research Abstract |
私は、ヒトの代表的な抗菌ペプチドであるディフェンシンが、感染防御に寄与する一方で、その発現量によっては、老化の促進、炎症性肺疾患の発症に寄与することを検討してきた。既に、我々は、全身にディフェンシンを過剰発現するマウスを作製、解析し、その筋萎縮について報告した。また、当該マウスでの尿中8-OHdGの増加や、骨密度の低下も確認された。このように、ディフェンシン過剰発現マウスが、老化モデルマウスとしての特徴を備えていた。肺の生理的老化である老人肺と、たばこなどの外的因子により惹起される肺気腫は、肺胞壁の破壊の有無などにおいて、異なった病理像を呈するが、一方で、肺の老化が、肺気腫の発症に関与することも指摘されている。我々は、老化モデルマウスのひとつである、klotho欠損マウスの肺の病理像、機能を解析し、さらに、経気道的に投与したエラスターゼに対する感受性を検討したところ、klotho欠損マウスの肺は、炎症や肺胞壁破壊の乏しい老人肺に相当し、同時に、klotho蛋白の減少したヘテロ接合体マウスのエラスターゼに対する感受性が亢進していることを観察した。同様に、ディフェンシン過剰発現マウスでは、野生型同腹仔では肺胞壁の破壊を惹起しない少量のエラスターゼにおいて、気腫肺の惹起される傾向を見出している。一方、私は、defensinのなかでも、humn β-defensin-3が、培養細胞に対して強い細胞傷害性を示すことを確認してきた。このような細胞傷害性は、生理的濃度と予想される低濃度でも認められた。腫瘍細胞へのこのような作用は、一方で、抗腫瘍効果としての意義も有すると予想される。個体レベルでも、マウス背部皮下に接種した腫瘍塊にたいし、human β-defensin-3マウスホモログの合成ペプチドを皮下投与すると、腫瘍塊の増大を有意に抑制した。
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Research Products
(4 results)