2006 Fiscal Year Annual Research Report
内因性一酸化窒素合成酵素酵素阻害物質蓄積抑制による慢性腎疾患進展予防
Project/Area Number |
18790582
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
上田 誠二 久留米大学, 医学部, 助手 (80322593)
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Keywords | 慢性腎疾患 / NO / asymmetric dimethylarginine / 動脈硬化 / 高血圧 |
Research Abstract |
慢性腎疾患(CKD)患者では、asymmetric dimethylarginine(ADMA)が蓄積し、このことがこの病態において心血管合併症が多発する一因と推察されている。しかし、その病態におけるADMAの上昇機序、及びADMAの上昇が真に心血管合併症の進展に寄与するか否かは不明であった。これまでADMAは尿中に排泄されることから、腎からのクリアランスの低下がADMA蓄積の主因であると考えられていたが、我々は腎不全モデルラットを用いた検討で、ADMAの尿中排泄はむしろ腎不全に伴い上昇しているにも関わらず血清ADMAが上昇していることを明らかにし、その上昇の主因は代謝に関与するdimethylarginine dimethylhydrolase(DDAH)、産生に関与するprotein methyltransferaseの発現異常が関与していることを明らかにした(J Am Soc Nephrol 17;2176,2006)。さらにこのモデルにDDAHを過剰発現させると、ADMAは低下し、高血圧、尿蛋白、腎不全進展を抑制できることを明らかにした(J Am Soc Nephrol 2007,in press)。これらはCKDで蓄積したADMAが生理活性を持ちうることを示した最初のエビデンスであり、これにより内因性ADMAが病態及びその進展に関与し得ることが初めて明らかとなった。現在、動物実験より得られたこれらの知見"CKDにおけるADMAの蓄積が心血管合併症、あるいはCKDの進展因子である"という仮説を検証するために、同意が得られた当院入院患者を対象に(現在約70症例が登録)、血清、尿中ADMAと腎障害、血管機能、合併症、あるいはそれらのサロゲートマーカーとの関連を検討、解析中である。 また、申請者らは、腎不全患者の血清中の終末糖化蛋白(AGE)とADMAの間に強い正相関があることを見出し、さらに培養ヒト血管内皮細胞にAGEを添加すると、DDAHの酵素活性が低下し、それに伴いADMAが蓄積してくることを明らかにした(未発表データ)。このAGEによるDDAH活性の低下は、RAS阻害薬であるテルミサルタンの前処置により抑制されることも観察された。このことから、RAS阻害薬の臓器保護作用の一部にADMA低下作用が関与している可能性が示唆される。この知見も併せて上記の調査で検証中である。
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